「さて、行こうかな。」そう呟いて玄関の扉を開け、外へ出て扉の鍵を閉める。いつも一緒にいる愛犬とも、仕事や学校に行っている間はしばしお別れです。
この時、飼い主さんはもちろん寂しいですが、わんちゃんはもっと寂しい思いをしているかもしれません。なるべく早く家に帰ってきて、わんちゃんの寂しさを解消させてあげたいですよね。
ところで、皆さんは仕事などで家を空ける時、わんちゃんをどうしているでしょうか?
部屋の中に放している「フリー派」の飼い主さんもいれば、ケージやサークルの中に入れる「ハウス派」の飼い主さんもいます。「フリー派」と「ハウス派」、どちらにも良い面があるので、初めてわんちゃんを留守番させる飼い主さんは、どちらがいいのか迷ってしまいますよね。
そこで今回は、留守番時にケージやサークルに入れる「ハウス派」についてお話します。というのも、私も「ハウス派」なので、こちらの方が利点を多く挙げられると思ったからです。
「なんで留守番時はサークルなどに入れた方がいいの?」
「サークルの大きさはどのくらいが適当なんだろう?」
「サークルの中には何を入れておくべきなの?」
これらの素朴な疑問にお答えします。
留守番時のわんちゃんのストレスがより少なくなるよう、わんちゃんに合った方法を一緒に見つけましょう。
わんちゃんのため?留守番時にサークルに入れる理由
留守番の間だけとはいえ「わんちゃんを狭い所に閉じ込めておくのはかわいそう」という飼い主さんもいるのではないでしょうか。でも、基本的に留守番時は、サークルなどの囲われた所にわんちゃんを入れておくべきなのです。これからその理由をお話ししますね。
誤飲・誤食の防止
わんちゃんをサークルの中にいれる理由の1つ目は、「誤飲・誤食の防止」のためです。
わんちゃんをサークルに入れない、つまりフリーの状態にしておくと、わんちゃんは部屋や家の中を探検します。探検を続けると、視界に入った様々な物に興味を持ちます。そして、興味を持った物を口の中に入れてしまうと、場合によっては飲み込んでしまうこともあるのです。
そうなると、自然に排出されない限り、動物病院で手術なんて事態も起こるかもしれないのです。わんちゃんの体調にだって大きな影響が出てしまいますよね。
そうならないためにも、わんちゃんはサークルに入れておく必要があるのです。わんちゃんをサークル内に入れておけば、誤飲や誤食の可能性はグッと低くなります。
サークル内に誤飲や誤食の原因になる物を入れておかなければ、サークル内にいるかぎりはそれらの心配をしなくて済みます。また、たとえサークル外に誤飲の原因になる物が置いてあったとしても、サークルを飛び越えない限りは、それを口に入れる可能性は低いのです。
特に何でも口に入れたがるわんちゃんの場合は、しっかりサークルの中で留守番をしてもらいましょう。それが愛しいわんちゃんのためになります。
地震などの災害対策として
わんちゃんをサークルの中に入れる理由の2つ目は「災害対策として」です。
日本は他の国に比べて、地震が多い国と言われています。いつ起こるか分からないのが地震です。もしわんちゃんが1匹でいる時に大きな地震が起きたら。頭から血の気が引きますよね。
さらに地震だけではありません。最近は台風の勢力が以前にも増して強くなっています。また、突風や竜巻が起こることも少なくありません。そんな強烈な風で窓ガラスが割れてしまったとしたら。こちらも冷や汗が出そうになりますよね。
そんな、わんちゃんへの災害の被害を最小限に抑えるためにも、サークルに入れることが大切になってきます。
もしわんちゃんをフリーにしておくと、大きな地震などの災害が起こった時、わんちゃんはどこに逃げればいいのか分からず、パニックを起こしてしまう可能性があるのです。場合によっては地震で落ちてきた物にわんちゃんが当たり、命にかかわることもあります。
それらを防ぐためにも、サークルは役立ちます。サークルの中にわんちゃんを入れておけば、不測の事態が起きた時にも助かる確率が上がるのです。
日常的にサークル内にわんちゃんが入っていれば、わんちゃんは「サークル=安全な場所」という意識を持ちます。そのため、不測の事態が起きた際にも、サークルの中にいることでパニックを起こしにくくなるのです。
災害対策を中心に考えるなら、上から物が落ちてきてもある程度安全なように、サークルは屋根付きのものにした方がいいでしょう。また、サークル内に頑丈なクレートを入れておくと、より安全になります。
わんちゃんの心の安らぎのために
わんちゃんをサークルの中に入れる理由の3つ目は「わんちゃんの安らぎのため」です。
先ほど「サークル=安全な場所」と書きましたが、もしわんちゃんがフリーだった場合、わんちゃん自身の心身が完全に休まる環境を確保できません。部屋のどこにでも行ける反面、心から落ち着ける場所が無く、逆にストレスがたまってしまうことも。そのストレスをいたずらという行為にぶつけ、誤飲などに繋がる場合もあるのです。
犬は本能的に狭い場所に安心感を覚えます。そのため、フリーにするよりもサークルなどの狭いスペースにいた方が、わんちゃんは安心するのです。
ただでさえ留守番はわんちゃんにストレスを与えます。それを少しでも和らげるためにも、安心・安全なサークルの中にわんちゃんを入れるようにしましょう。
ただし、「サークル=留守番」という条件付けにならないよう、わんちゃんには普段の生活からサークルに慣れておいてもらいましょう。
大きさや広さは?留守番サークルをチェックしよう
ここまで、サークルが留守番中のわんちゃんにとって大切な場所だとお伝えしてきました。でも、いざサークルを購入しようとした際、「大きさや広さはどれくらいがいいんだろう?」と思いますよね。
そこでここからは、具体的にサークルはどれくらいの大きさ・広さがいいのか見ていきます。ぜひ、わんちゃんに合った物を見つけてみてください。
大きさは「足し算」で決めよう
まず、サークルの「大きさ」についてです。長方形や八角形など、サークルにも様々な形状がありますが、ここではスタンダードな四角形のサークルを例にあげ、その一辺の長さを見ていきます。
基本的なサークルの大きさは、わんちゃんの体長にトイレとベッドスペースを足した長さがちょうどいいと言われています。これぐらいの長さがあれば、この後紹介する「広さ」もちょうどいい広さになります。
また、サークルを子犬の頃に買ったままだという場合は、今のわんちゃんの体格に合わせたサークルを買うようにしましょう。わんちゃんが大きくなれば体長も変わってくるので、適したサークルの大きさも自然と変わってくるからです。
これから新規にサークルを買うという飼い主さんも、買い替えを検討している飼い主さんも、「わんちゃんの体長+トイレ+ベッド」の公式を頭に入れておきましょう。サークル選びの一つの基準になりますよ。
広さは「Uターン」と「伏せ」で決めよう
次に、サークルの「広さ」についてです。
わんちゃんに合ったサークルの広さは、ベッドとトイレの場所を確保した上で「わんちゃんが楽にUターンでき、サークルの真ん中辺りでゆったりと伏せができる」ことが基準になります。先ほどの「大きさ」と一緒に考えると、自然にサークルの広さが決まってくるはずです。
もちろん、大きければいいというわけではありません。かといって、狭すぎるとわんちゃんは圧迫感を感じてしまいます。あくまでも「わんちゃんが安らげる広さ」というのが前提なので、広すぎても狭すぎてもいけません。
ここで、わんちゃんの留守番時の様子を撮影した動画を見てみましょう。
これを見ても分かるように、わんちゃんは留守番のほとんどの時間を寝て過ごします。わんちゃんが安心して眠れるように、サークルの広さを調整しておきましょう。
ここも重要!サークルの高さ
最後に見逃してはいけないポイントがあります。サークルの「高さ」についてです。サークルの高さが低いと、ジャンプ力のあるわんちゃんの場合、脱走の常習犯になってしまいます。こうなると飼い主さんも安心して留守番をさせられないですよね。
サークルの上に屋根が取り付けられる場合は、留守番時だけでも屋根を取り付けた方がいいでしょう。災害時の落下物からの保護にも繋がります。
屋根を取り付けられないという場合は、サークルの高さをわんちゃんが後ろ足で立った状態の1.5倍程度にしておくと、脱走の可能性が低くなります。
また、こちらも子犬時に購入したままの高さだと、成長したわんちゃんが脱走する可能性が高くなります。そのため、成犬になってわんちゃんの体が大きくなったら、ぜひサークルを買い替えるようにしてくださいね。
おすすめサークルはこちら!
大きさと広さと高さ。ここまで紹介したポイントを考えても、サークルには様々な種類があって迷ってしまいますよね。そこで、私がおすすめするサークルを以下の記事で紹介します。
何が必要?留守番時のサークルに置く「5種の神器」
ここまで、わんちゃんに合ったサークルの大きさや広さ、高さなどについて紹介しました。これでわんちゃんも安心して過ごせる、というにはまだ早過ぎます。ただわんちゃんをサークルに入れただけでは、閉じ込めているのと変わりないからです。
そこでここからは、わんちゃんにとってサークルの中を快適空間にするために、「これは欠かせない」というアイテムやグッズを紹介します。名付けて「5種の神器」です。ぜひ参考にしてみてください。
トイレ
神器の1つ目は「トイレ」です。留守番中にわんちゃんが粗相をしないように、サークル内にトイレは置いておきましょう。わんちゃんも用を足したいのに排泄する場所が無いと困りますよね。特にトイレが近いわんちゃんの場合、サークル内のトイレは必須です。
トイレにも様々な種類がありますが、置くスペースが狭い場合はトイレトレーを、スペースを広めにとれる場合はしっかりしたトイレを置いた方がいいでしょう。
普段わんちゃんが使っているトイレを置くのが理想ですが、サークル内への移動が難しい場合は似た形状のトイレを置くと、わんちゃんのストレスも小さくなります。
ペットベッドもしくはクレート
神器の2つ目は「ペットベッド」もしくは「クレート」です。これらはサークル内で、わんちゃんがもっとも落ち着ける場所でもあります。
なぜ落ち着ける場所を2つ挙げたかというと、わんちゃんの好みや飼い主さんの目的によって、落ち着ける場所が変わってくるからです。
わんちゃんが普段モコモコのペットベッドで寝ている、またはわんちゃんの寝心地を優先したいという場合は、柔らかい素材でできたペットベッドを選びましょう。わんちゃんもリラックスできるはずです。
これに対して、災害対策や普段の移動用として、またわんちゃんが普段から慣れているのであればクレートを選びましょう。クレートの方が頑丈なので、もしもの時に備えることができます。また、クレートをサークル内に入れる時は、クレートの入口の扉は開けたままにしておきましょう。
どちらにするか迷いますが、わんちゃんが好きなタイプのものを使うのが最優先ですよ。
おすすめのペットベッド
おすすめのクレート
給水器
神器の3つ目は「給水器」です。給水器は、わんちゃんが水を飲みたい時にいつでも飲めるようにしておきましょう。また、夏場は水を飲むことでわんちゃんの体のクールダウンにもなります。
ただ、わんちゃんが水の入った器をひっくり返してしまうことがあるので、給水器は複数用意するか、ひっくり返せないような物にしておきましょう。
おすすめの給水器
おもちゃ
神器の4つ目は「おもちゃ」です。動画でも紹介した通り、留守番中のわんちゃんは寝ていることがほとんどです。それでも、目が覚めてしまってやることがないと、「暇の波」がわんちゃんを飲み込んでしまいます。そんな時にお気に入りのおもちゃがあれば、わんちゃんも退屈しないで済みますよね。
ただし、おもちゃの形状や素材によっては誤飲・誤食の原因にもなるので、おもちゃを選ぶ際は注意しましょう。
飼い主さんの匂いがついたもの
神器の5つ目は「飼い主さんの匂いがついたもの」です。これ、結構重要なものなんですよ。
一人遊びが得意なわんちゃんでも、ふとした時に飼い主さんがいないことに気づくと、途端に飼い主さんが恋しくなり、寂しさが募ってしまいます。まして寂しがりなわんちゃんの場合は、飼い主さんを探そうとしてサークルからの脱出を試みるかもしれません。
それを防ぎつつ、わんちゃんに安心感を与えるためにも、飼い主さんの匂いがついた布などをサークルの中に入れておきましょう。中に入れるのは、飼い主さんが着ていたTシャツや使っているタオルでかまいません。
嗅覚が優れている犬なので、少しでも飼い主さんの匂いがすれば安心し、サークル内でも落ち着いて過ごすことができます。特にいつもの時間よりも長く留守にする場合は、犬が寂しがらないよう、飼い主さんの代わりとして匂いのする物を入れておきましょう。
サークル外の環境も重要!
ここまでは、わんちゃんが過ごすサークル内の環境について見てきましたが、サークル外の環境も留守番時には重要になってきます。
1匹で残されるわんちゃんは、それは寂しいものです。普段、飼い主さんと賑やかな環境にいれば、留守番時のシンとした静けさや、人気の無い雰囲気などはわんちゃんの寂しさを倍増させてしまいます。
そこで、サークル外の環境を飼い主さんがいる状況に再現しておくと、わんちゃんの寂しさも和らぎます。
たとえば、部屋にいる時は常にテレビをつけておくという飼い主さんは、出掛ける際もテレビをつけっぱなしにしておきましょう。そうすると、わんちゃんは飼い主さんがいる雰囲気を感じ、寂しさが和らぎます。
また、夕方から夜にかけて家を不在にする場合は、室内の電気をつけておくといいでしょう。真っ暗な中で留守番をするよりもわんちゃんが安心します。
飼い主さんがいる、いつもの状況を再現することで、わんちゃんもどこかに飼い主さんがいるかもしれないと感じ安心して留守番ができます。もちろん、万が一の脱走のことを考えて、危険なものは出しておかないようにしましょう。
まとめ
ここまで、わんちゃんの留守番時におけるサークルの重要性などについて紹介しました。まとめると以下のようになります。
- 留守番時はサークルへ! 誤飲や「もしも」の備えにも
- サークルの大きさや広さは部屋に合ったものを
- サークルに置く「5種の神器」を用意しよう
- 飼い主さんがいる! サークルの外の環境も整えておこう
留守番は、大好きな飼い主さんと離れる機会です。いつも飼い主さんといるわんちゃんにとっては、離れることでストレスになってしまいます。特に留守番が長時間になる場合、わんちゃんの寂しさはどんどん募ってしまいます。
一番は飼い主さんが早く帰ってあげることですが、それができない時はわんちゃんがいるサークル内を快適な空間にしてあげましょう。留守番中、わんちゃんが気持ちよく眠れる空間にできれば、そのサークルは立派に役目を果たしています。
せっかくできた新しい家族です。わんちゃんが1匹でも快適に過ごせるように工夫しながら、一緒にいられる時間ができたら、思う存分コミュニケーションをとるようにしましょう。