それは、夕飯を食べ終えてリビングでくつろいでいる時のことでした。私は雑誌を読み、ラテとマロンはそれぞれ私の片膝に頭を乗せて寝息を立て始めていました。するとメッセージアプリの着信を告げるスマホの音楽が鳴ったのです。「誰だろう?」と思いメールを開くと、行きつけのペットショップで知り合った、柴犬のタロ君を飼っている友人からでした。
メールのタイトルは「緊急で教えてほしいです!」と、切羽詰まったものでした。何事かと思って急いでメールを開くと、画面いっぱいに文章が並んでいました。
文章が多すぎて何を聞きたいのか解読に時間がかかりましたが、内容は愛犬タロ君のトイレのしつけについてでした。
文章の様子からかなり焦っている感じがしたので、私の方から「具体的にどんなことで困っているのですか?」と改めてメールを送りました。すると、今度は要点をまとめて送ってきてくれました。
- なかなかトイレと決めた場所で用を足してくれない
- トイレシートを破ってしまう
- そもそもトイレのしつけは、今のままで大丈夫なのか不安だ
彼も落ち着いてきたのか、「こんな夜分に申し訳ない」と謝りの言葉も入っていました。
トイレのしつけに関しては、多くの飼い主さんも困った経験があるのではないでしょうか。わんちゃんがなかなか覚えてくれず、彼のように若干パニックになった方もいるはずです。
そこで今回は、トイレのしつけに関して彼と交わしたやりとりを、一問一答形式でお伝えします。愛犬のトイレのしつけに困っている飼い主さんは、ぜひお読みください。
子犬と成犬で違う?愛犬のトイレのしつけ方
子犬と成犬では、トイレのしつけの方法が若干違います。まだ習慣が身に着いていない子犬と、ある程度自分のペースが身に着いている成犬では、覚える期間や覚え方そのものにも違いが生まれるからです。それぞれ見ていきましょう。
子犬編
トイレのしつけは、わんちゃんと生活してく上で避けて通れないしつけの一つです。初めての場所に来て自分のトイレがどこか分からなかったら、わんちゃんも戸惑ってしまいますよね。そのため、わんちゃんを迎えたその日からトイレのしつけを始めるのが理想です。
わんちゃんの種類や性格にもよりますが、2~3週間でトイレを覚えさせるのが一般的です。また、遅くても1ヶ月以内に覚えさせるようにしましょう。それ以上時間がかかってしまうと、わんちゃんにも飼い主さんにストレスがかかってしまうからです。
どうしてもしつけが上手くいかない時は、しつけの専門家に相談してみましょう。
子犬がトイレを覚えるまでは、目を離さないのが基本です。ケージやサークルの外で遊ばせていたとしても、トイレを覚えるまでは粗相をしてしまうことが多いので、目を離さないでおきましょう。
トイレはわんちゃんの落ち着ける場所に置きます。ケージの中や、ケージの外にも置いておくとしつけがスムーズに行えることが多いです。
また、トイレのしつけが失敗する原因は、わんちゃんの様子を把握しない「観察不足」と、わんちゃんにとっていい環境を作らない「管理不足」が多いと言われています。
「観察不足」は、わんちゃんがどんなタイミングで排泄をするか、排泄の前触れは何なのかが把握できていない状態を言います。わんちゃんの様子をあまり気に掛けていない飼い主さんに多い原因です。
解決方法は、わんちゃんの排泄のタイミングを記録することです。ご飯の後やお昼寝の前など、わんちゃんが排泄したタイミングや前触れを記録していくことで、次第に排泄のタイミングが分かるようになります。専用のノートを作るか、スマホのメモアプリなどを活用しましょう。
もう一つの「管理不足」は、わんちゃんが排泄する場所の管理ができていない状態を言います。トイレが汚れている、トイレの場所が明確になっていないなど、わんちゃんにとっていい環境を作れておらず、結果わんちゃんが粗相をしてしまうのです。
解決方法は、わんちゃんに粗相をさせない環境を作ることです。トイレはいつも清潔にしておく、トイレと寝床の場所をきちんと分けるといった、わんちゃんがトイレを認識できるように環境を整えましょう。また、わんちゃんが排泄しそうになったらトイレに入れるなど、排泄の手伝いも行いましょう。
もし飼い主さんの知らない間にわんちゃんが粗相してしまったら、叱ったり驚いたりといった大きなリアクションはせず、淡々と後片付けをして、臭いも残さないようにしましょう。リアクションをしてしまうと、わんちゃんは「こうすれば飼い主さんの気が引けるんだ!」と覚えてしまい、粗相が治まらない場合もあるので注意しましょう。
成犬編
成犬のトイレのしつけには、その前にわんちゃんと信頼関係を築くことが大切です。信頼関係を築く方法としては「アイコンタクト」と「リーダーウォーク」が有効です。
上の記事でも紹介していますが、改めておさらいしてみましょう。
「アイコンタクト」は、しつけに重要な集中力を身につけさせるために行います。
まず、わんちゃんの名前を呼んでおやつで注意を引き、わんちゃんの視線が飼い主さんと合ったらおやつを与えます。これを何回か繰り返し、慣れてきたらおやつでの誘導を止めます。そして名前を呼んで目線を合わせることができた時に、おやつを与えて褒めるようにします。こうすることで、わんちゃんが飼い主さんに集中することを覚えさせるのです。
ですが、成犬は長時間のしつけでストレスを感じてしまうこともあるので、なるべく短時間で切り上げるようにしましょう。
次に「リーダーウォーク」です。これは飼い主さんが主導権を握って散歩することを言います。リーダーウォークを身につけることで、わんちゃんの散歩中の飛び出しも防げます。また、飼い主さんが行き先を決めることで、わんちゃんに飼い主さんがリーダーだと認識させることができます。
具体的な方法は、散歩中わんちゃんが飼い主さんの前に行こうとしたら、反対方向に素早く行き先を切り替えます。そして飼い主さんの誘導方向にわんちゃんがついて来ることができたら、褒めたりおやつを与えます。これを繰り返すことで、わんちゃんは「飼い主さんがリーダーなんだと理解するようになります。
リーダーウォークを実際に行っている動画を紹介しますので、ぜひご覧ください。
「アイコンタクト」と「リーダーウォーク」が身に着いたら、いよいよトイレのしつけに入ります。起きた時やご飯の後など、わんちゃんが排泄しやすい時間を狙いましょう。
まず、トイレとして定めたい場所をサークルなどで囲い、トイレシートを敷き詰めます。その後、トイレシートの枚数を徐々に少なくしていきます。最終的にトイレにしたい場所と実際にしている場所が離れていた場合、トイレシートを10センチ程度ずつ移動していくと、わんちゃんへのストレスも少なくなります。
この時わんちゃんが排泄を失敗しても、子犬の時と同じく叱らないことが大切です。後片付けも速やかに行いましょう。
成犬のトイレのしつけは、子犬に教えるよりも長くなることを覚悟しておきましょう。特に、今まで屋外で排泄していたわんちゃんは、トイレシートが何なのか分からないことも多いです。そのため、トイレシートに排泄させることをまず覚えてもらいましょう。
また、わんちゃんが臆病だったり飼い主さんに対して攻撃的な場合は、無理せずしつけの専門家に頼んでみましょう。
誘導と消臭!スプレーを使ってみよう
こっちだよ!トイレの場所へ誘導するタイプ
こちらは、いつも使用しているトイレシートにスプレーするだけで、わんちゃんのトイレのしつけをサポートしてくれるものです。アンモニアが含まれているので、トイレの場所がここだとわんちゃんに教えることができます。
100mlと小型サイズのため置き場所にも困らず、それほど荷物にもならないので、わんちゃんと旅行に行った先でトイレの場所を教えるのにも役立ちます。
なかったことに!粗相の後片付けに消臭タイプ
こちらは、おしっこの主な臭いの元であるアンモニアと、うんちの主な臭いの元であるトリメチルアミンを強力に消臭してくれるものです。また、除菌もして臭いの発生源を少なくする効果もあります。
着色料や芳香剤は使用しておらず、わんちゃんにも安心です。さらに500mlと大容量のため、大きく広がってしまった粗相の後などにも思いきり吹き掛けて使用できます。
シートを破るわんちゃんにはコレ!原因を知って物理的に防ごう
運動量が足りない
特にまだ散歩ができない子犬や、散歩の時間が短い成犬に多い原因です。運動量が足りず、「もっと運動がしたいよ!」というストレスが溜まり、トイレシートを破いてしまいます。
運動量が足りないと感じたら、わんちゃんに十分な運動をさせましょう。わんちゃんに合った散歩距離や運動量を把握して、わんちゃんが満足するまで運動させるのが理想です。
長時間の留守番で暇
長時間飼い主さんにかまってもらえず、しかも手近に暇つぶしの道具が無い時、「暇だよー!」と暇すぎてトイレシートを破ってしまうことがあります。
仕事などで長時間家を空ける時は、魅力的なおもちゃやおやつを与えてわんちゃんの暇を紛らわせましょう。
お腹が空いている
わんちゃんに対してのご飯の量が足りていないと、空腹を紛らわそうとしてトイレシートを食べてしまうことがあります。
すでに1日の摂取カロリーに達しているという場合は、ご飯を与える回数を増やしてみましょう。今まで2回だったら3回に、3回だったら4回に、という具合です。また、水などでドッグフードをふやかして量を増やすという方法もあります。
さらに品質が低いドッグフードだと、わんちゃんの体に吸収される栄養が少なく、結果的にわんちゃんが早く空腹感に襲われてしまいます。そのためドッグフードの種類も見直してみることも検討しましょう。
わんちゃんがトイレシートを食べてしまった際は、量が少量ならうんちと一緒に排泄されるはずです。排便が通常通りにあり、わんちゃんも元気そうなら様子を見て大丈夫です。
逆に食べてしまった量が大量な場合は注意が必要です。排便が無く、わんちゃんが苦しそうにしたり元気が無かったりしたら、胃腸に問題が起きている可能性があります。状態が悪ければ手術をする可能性もあるので、動物病院へ行き獣医師さんに診てもらいましょう。
破らせないためには物理的に防ごう
これまで挙げた原因を解消するのと同時に、物理的にトイレシートを破らせないようにしましょう。トイレトレーをメッシュ状のものにしてトイレシートが固定できるものだと、わんちゃんが破こうとしても防いでくれます。
また、トイレシート自体を強度が高い洗えるタイプの物に変えてみるのもいいですね。
それでも失敗してしまう時は?
ここまで紹介したどの方法を試してもトイレのしつけに失敗してしまう時は、無理せず、しつけの専門家に相談や依頼をしてみましょう。しつけが長引くと、わんちゃんにも飼い主さんにもストレスが溜まってしまうからです。
また、わんちゃんの体や心に病気がある可能性もあるので、しつけが上手くいかない時は動物病院の獣医師にも相談し、体調を診てもらいましょう。
まとめ
ここまで、トイレのしつけでの困り事について書いてきました。まとめると以下のようになります。
- 子犬も成犬も始めが大事!根気よく教えよう
- わんちゃんの状態に合ったスプレーを効果的に使おう
- 破る前に破らせない!原因を知り、トイレシートは固定しておこう
- できない時は無理せず、専門家に任せてみよう
トイレのしつけは、わんちゃんや飼い主さんにとって生活の「要」です。根気よく取り組むことで、わんちゃんの飼い主さんに対する信頼も築けます。また、わんちゃんがトイレを失敗しても叱ることだけはやめましょう。それまでの信頼が崩れてしまいます。
トイレのしつけが上手くできれば、いずれわんちゃんを連れて旅行にだって行けるようになります。そう考えると楽しくなりますよね。
わんちゃんのストレスにならないよう、お互いの信頼関係を高めて、トイレのしつけを軽々と乗り越えちゃいましょう。タロのしつけも上手くいくように願っています。