愛犬にはずっと元気で過ごしてほしい。飼い主さんは皆同じ思いだと思います。
話すことができないわんちゃんは「ここが痛いよ! 」と教えてくれるわけではありません。ですが、わんちゃんのしぐさや体の変化をよく観察していると、不調のサインに気づくことができます。
今回はわんちゃんが起こしやすい耳の病気「外耳炎」についてまとめました。うちのラテもマロンも耳が蒸れやすく、夏になると痒がることがあったので病院に連れて行ったら、外耳炎になりかけていたことがありました。
その時は、いつもと違う臭いとたくさんの耳垢でびっくりしてしまいました。愛犬に顔を近づけた時に耳からいつもと違う臭いがしませんか? もしかしたら耳の病気かもしれませんよ。
できるだけ早く病院に連れていく為にも、病気のサインを知っておく事が大切です。スキンシップをとりながら、わんちゃんの耳の様子をチェックしてみてください!
耳の臭いはSOSのサイン!?
本来わんちゃんの耳はあまり臭いません。顔を近づけたり抱っこした時に「なんだか臭う」と思ったら、わんちゃんからのSOSです!
変な臭いがするから、耳垢が溜まっているのかなと一生懸命耳掃除をするのは、実は良くない行動なのです。
綿棒などを使って耳掃除をしようとして、耳垢が耳の奥に移動してしまったり、耳を傷つけたり、炎症が起きている時は悪化する恐れもあります。
わんちゃんの耳をのぞいてみてください。奥の方は見えませんよね。実はわんちゃんの耳は人の耳とは構造が少し違います。
人間の耳の中は外耳から中耳、内耳までほぼまっすぐつながっています。一方わんちゃんは外耳から中耳までL字のような形で曲がっているのです。なので、綿棒などで掃除しようとすると、耳の中を傷つけやすいのです。
健康な場合、汚れは自然と外に排出される仕組みになっています。中から押し出されて、外から見える所まで耳垢は出てくるので、綿棒で中まで掃除する必要はないのです。
外耳炎の原因は様々です。耳掃除が不十分で菌が繁殖してしまう事や、ウイルス感染、ダニの繁殖、アレルギーが原因の場合もあります。
【主因】
- アトピー性皮膚炎、食物アレルギー
- 内分泌疾患(ホルモン疾患)
- 分泌線(耳垢線)の問題
- 異物(植物のノギ、耳毛など)
- 感染性疾患
- 免疫介在性疾患・自己免疫性疾患
- 角化障害
- 微生物、寄生虫やウイルス
【二次的原因】
- 細菌、真菌、酵母菌
- 薬剤に対する反応
- 過剰な耳掃除
健康なわんちゃんの耳垢は、黄色っぽくて臭いや粘付きもほとんどないよ。少しでも違う耳垢になったら注意が必要です!
耳に水分が残ったままにしておくと、蒸れて菌が繁殖する原因になってしまいます。お風呂や水遊び以外でも、梅雨の時期や夏の蒸し暑い時期も耳トラブルが多くなる季節です。
他にも、体質的に耳トラブルを起こしやすい犬種もいます。垂れ耳、耳毛が多い、耳道が狭い、耳垢が多い犬種はトラブルになりやすいといわれています。
もしわんちゃんがこの犬種でしたら、毎日耳のチェックをするように日課にするのがオススメです。
- 垂れ耳の犬種(ゴールデンレトリバー、ラブラドール・レトリーバー、キャバリアなど)
- 耳毛が多い犬種(ミニチュア・シュナウザー、プードルなど)
- 耳道が狭い犬種(パグ、ブルドッグ、フレンチブルドッグなどの短頭種)
- 耳垢が多い犬種(アメリカンコッカースパニエル、シーズー、ウェスティなど)
耳垢の色や臭いがいつもと違う、わんちゃんが痒がって耳をかいたり、頭を振ったりする時も、もしかすると耳の病気が原因かもしれません。
耳垢の色や臭いで健康状態のチェックができます。今のわんちゃんの耳は健康な状態かどうかチェックしてみましょう。
- 耳はあまり臭わない
- 耳垢は黄色っぽくて粘り気は少ない、量も多くない
- 耳をめくったら、腫れやかさぶたなど荒れている様子はなく綺麗なピンク色をしている
- 愛犬が耳を気にする仕草はしていない(耳の中や後ろを掻く、耳を床にこすりつける、首や頭を振る、耳に触られるのを嫌がるのは耳トラブルのサインかもしれません)
犬の耳垢が茶色くて臭いのは◯◯菌が引き起こす外耳炎!?
茶色や黒っぽい耳垢が大量に出ていて臭う場合は、マラセチアという酵母菌による外耳炎の可能性が高いです。
マラセチアは健康なわんちゃんの耳や皮膚にも存在する酵母菌です。健康な時は問題ないのですが、わんちゃんの免疫力低下や耳の汚れや湿度でマラセチアが異常繁殖し、外耳炎を引き起こします。
【症状】
[耳垢]茶色や黒の耳垢が大量に出る
[臭い]独特な発酵臭がする(納豆やイーストのような臭い)
[耳の状態]赤く腫れて強い痒みが出る
[犬の仕草]後ろ足でしきりに掻く、頭をぶんぶん振る、壁や床に頭をこすりつける
【対処法・予防法】
激しく掻くと耳の中が傷つき外耳炎が悪化する可能性があるので早めに受診しましょう。合わない成分のイヤークリーナーを使うと症状が悪化する可能性もあります。主に点耳治療を行いますが、炎症が酷い場合は内服薬での治療を行う場合もあります。
マラセチアの増殖を防ぐ為には、耳の中を清潔に保つことが重要です。イヤークリーナーを使い清潔を保ちましょう。マラセチアは湿度が高い環境を好むので、耳の通気性を良くしてあげましょう。
愛犬の耳から黒い耳垢の塊が!? もしかしたらこの病気かも!?
わんちゃんが耳の辺りを痒がっていて、耳から大量の黒い耳垢が出ている場合は、耳ダニ感染症かもしれません。
ミミヒゼンダニという動物の耳の中に寄生するダニが繁殖することにより引き起こします。耳ダニ感染症は耳の中の汚れが原因で発症する他にも、耳ダニ感染症にかかっている動物との接触や、私たちの衣類についたダニが原因になることもあります。
【症状】
[耳垢]大量の黒い耳垢の塊がでてくる
[臭い]いつもとは違う悪臭がする
[耳の状態]痒がる事で、耳周辺の毛が抜けたり、耳や目に炎症が起こることがある
[犬の仕草]痒がって耳を掻きむしる、頭や耳を床や壁にこすりつける、(炎症が酷くなり三半規管まで到達してしまうと)顎を傾けて旋回したりふらふらする
【対処法・予防法】
耳垢はとらずに病院を受診しましょう。耳ダニ感染症と特定させると、耳の洗浄や耳垢の掃除をして、駆除剤を投与します。
駆除剤は医師から言われた期間は必ず使いましょう。痒みがなくなってもダニを全て駆除するまでは駆除剤を使うことが大切です。もし多頭飼いしている場合は他のペットも感染している可能性が高いので一緒に診察を受けましょう。
耳ダニ感染症を予防する為には、わんちゃんの耳を清潔に保つことはもちろん、部屋や衣類を清潔にする、耳ダニ感染症にかかっているわんちゃんと接触しないよう気をつけることも必要です。
犬の耳が臭いし膿もでている。この症状も外耳炎?
耳垢だけでなく膿が出ているととても心配になってしまいますよね。
膿も出ている場合は、細菌性外耳炎の可能性が高いです。プロテウス属・コリネバクテリウム属・大腸菌・ブドウ球菌などの細菌が悪さをして外耳炎になってしまいます。
放っておくと内耳炎・中耳炎になってしまいます。異変に気づいたらすぐに病院に連れていきましょう。耳の掃除をして耳を傷つけると悪化する可能性もあるので、そのまま連れていきましょうね。
【症状】
[耳垢]ベトベトの耳垢が出る
[臭い]いつもとは違う悪臭がする
[耳の状態]膿が出る。耳をめくると赤くなっていたり、痒みや痛みを伴う。外耳道が腫れる、外耳道の皮膚が厚くなる、聴力が低下するなどの症状が出ることもある。
[犬の仕草]耳や頭や首を掻く、頭を振る、頭や耳を壁や床にこすりつける、耳を触ると嫌がる
【対処法・予防法】
病院では、感染した菌を退治する為に、抗生物質や抗菌剤・炎症を抑えるための抗炎症剤を投与する場合が多いです。
耳の奥まで毛が生えている、耳の中が湿ったままにする、耳に傷がある、免疫力が低下している状態だと発症しやすくなります。清潔を保ち、菌が繁殖しにくい環境になるようお手入れをしてあげましょう。
耳だれが多くて臭いもする。それって外耳炎が悪化しているのかも!?
外耳炎を放っておくと、悪化して中耳炎になってしまいます。さらに悪化すると内耳炎になってしまい、重症化すると手術が必要になってしまうケースもあります。
中耳炎や内耳炎は、外耳炎の症状と似ているため判断が難しいのですが、耳の状態がいつもと違ったり、痒がる・痛がる仕草をしていたらすぐに病院に連れていきましょう。
外耳炎と症状はほぼ同じ? 中耳炎の特徴は?
特徴が外耳炎とほぼ同じなので中耳炎に気づかない事もあるようです。ただ、外耳炎より耳だれの量が多い、強く痛がるときは中耳炎まで悪化しているようです。
中耳炎は口を開けるのも痛いので、変なあくびをしたり、硬いフードやおやつを食べようしないというサインを出すわんちゃんもいます。
【症状】
・耳のまわりがベトベトになる程の耳だれがある
・あくびを途中でやめる
・硬いペットフードを食べようとしない
・硬いものを片側だけで食べようとする
・聞こえずらい、音の反応が悪い
・頭を傾ける
・唇が垂れる
外耳炎が原因ではなく突然中耳炎になってしまうわんちゃんもいます。例えば、キャバリア種は中耳や耳管から中耳炎(原発性滲出性中耳炎)を発症します。
その他にも、フレンチブルドッグは鼓膜手前の「水平耳道」と呼ばれる部分が元々狭く、中耳炎を起こしやすい体質です。
犬種によってはこのように突然中耳炎を起こすわんちゃんもいますので、気をつけてあげましょう。
愛犬の耳の臭いや耳垢は市販の薬で治る?
ちょっとしたトラブルなら市販の薬で済ませたいと思った方、ちょっと待ってください。実は外耳炎は犬の健康トラブルの中でも特に多い病気で、再発を繰り返したり重症化することもある病気です。
その原因も様々で、先程紹介した細菌性外耳炎やマラセチアによる外耳炎などの他にもたくさんの原因があるので、わんちゃんがどの原因による外耳炎なのかを見極めて薬を使わないと効果がないのです。
それに薬の副作用で悪化させてしまう可能性もあるので、必ず獣医師に診察してもらい適切な薬を適切な期間続けることが大切です。
症状が良くなったからと途中で薬を止めてしまうと、完治せずにまた再発してしまうこともあります。特にダニの駆除剤を途中で止めてしまうと、ダニを全て駆除できず再発したり他の動物に移してしまう可能性もありますので、獣医師の指示に従って適切な期間続けましょうね。
耳垢は病気のサイン! 病院へ連れていく時の注意点は?
臭いがいつもと違う、耳垢が外耳炎の症状かも、と思ったら耳掃除はせずにそのまま病院へ連れていきましょう。
耳のトラブルで診察を受ける時、耳垢は病気を調べる為に重要なものなのです。それに、綿棒で耳垢を押し込んでしまったり、耳の中を傷つけると悪化させてしまいます。
病院に行くと、洗浄をしてからクリーナーや点耳薬を使ってケアしてくれます。発見が早く炎症を起こしていなければ、処方された点耳薬などを使って自宅でケアすると良くなるケースもあります。
外耳炎はとにかく早期発見が重要です。日頃からわんちゃんの耳をよく観察してあげましょう。
病気の予防は耳掃除の頻度と毎日のチェックが重要!
耳掃除は毎日する必要はありません。耳掃除をしすぎると、炎症を起こしたり傷つけてしまう恐れがあります。なので、1~2週間に1回、汚れが溜まっていなければ月に1回でも大丈夫です。
まず、耳掃除で絶対にやってはいけないことは綿棒を使う・ゴシゴシ擦る・アルコールの入ったイヤークリーナーを使うことです。
犬の耳はとてもデリケートです。擦ったり、アルコールの刺激で耳が傷つきます。綿棒も擦ってしまったり、汚れを奥に押し込んでしまうので使いません。
正しい耳掃除のやり方は、コットンにイヤークリーナーを染み込ませ、汚れを浮かせて取る方法です。力は入れずに優しく優しくケアしましょう。
- コットンにイヤークリーナーを染み込ませる
- 耳介(耳をめくって見える部分)にそっとコットンを押し当てて汚れをふやかす
- そっと汚れを取り除く
【ポイント】コットンにしっかりイヤークリーナーを染み込ませておけば、擦らなくても汚れがとれます。ただし、滴るほど染み込ませてしまうと、耳に水分が残って蒸れる原因になるのでつけ過ぎにも注意しましょう。力はいれずに耳にコットンを優しく押し当てるようにしましょう。
耳掃除に慣らす為に、はじめはご褒美のおやつを用意するのもいいですね。耳掃除のやり方はこちらの動画も参考にしてみてください。
もし、汚れが溜まっていてなかなか取れない場合は、イヤークリーナーを耳の中に入れてふやかして取る方法を試してみましょう。
- イヤークリーナーを数滴耳の中に垂らす
- 耳の付け根あたりを優しく押さえて、耳を優しく揉んでイヤークリーナーをなじませる
- 犬が頭を振ると、イヤークリーナーと汚れが飛び出してくるので優しく拭き取る
- 汚れが酷い場合は、何度か繰り返す
【ポイント】耳に水が入ると違和感があるのでわんちゃんが首を振ります。その力を利用してふやけた汚れを取る方法です。耳を揉む時も力を入れず優しく行いましょう。汚れが酷い場合は何度か繰り返すと取れますが、もし取れない場合は無理をせずに病院やペットサロンで耳掃除をしてもらいましょう。
ちなみに、ペットサロンで耳掃除をしてもらう場合は小型犬500円~、大型犬800円~が相場です。トリミングのついでに耳掃除をしてもらうのもいいですね。
自宅でのケアはとにかく優しくするのがポイントです。奥の方の汚れが取れない場合など、自分で掃除するのが難しいと感じたら無理してはいけません。
【ノルバサンオチック】
1つ目のオススメは、トリミングサロンや動物病院でも使われていて、オススメする獣医師が多い「ノルバサンオチック」です。ラベンダーの香りで、鎮静効果や消臭効果も期待できます。
容器の先端がノズルになっていて、わんちゃんの耳にも注ぎやすい形状です。汚れが落ちやすいと口コミでも好評で、軽度の痒みがおさまったわんちゃんもいるそうです。
【ビルバック エピオティック犬猫用】
2つ目のオススメは「ビルバック エピオティック」です。こちらも多くの獣医師が使用しています。
汚れ落ちも抜群で、耳の臭いがなくなり、炎症が良くなったという口コミも多いです。ただ、洗浄力が強いので、皮膚が特にデリケートなわんちゃんは肌が荒れない様に気をつけてあげましょう。
こちらは鼓膜が破れてしまったわんちゃんには使用できません。使っても大丈夫か心配な場合は、獣医師に相談してから使うと安心です。
まとめ
わんちゃんの耳の病気は早期発見できるとわんちゃんも飼い主さんも負担が少なく、早く治るケースも多いです。大切なのは、日々のチェックです。スキンシップをとりながらわんちゃんの耳をよく観察しましょう。
- わんちゃんの健康な耳の状態を把握して、スキンシップをとりながらチェックする事を習慣化する
- 耳掃除はイヤークリーナーを使って、とにかく優しく行う
- 耳掃除に綿棒は絶対禁止
- 汚れが取れない場合は無理に掃除をせずに病院やペットサロンで掃除してもらう
- 耳垢や臭いに違和感を感じたら、すぐに病院へ連れていく
- 病院へ行く時は耳垢は掃除せずそのままにしておく
- 外耳炎を放っておくと、中耳炎や内耳炎になり重症化すると手術が必要になることもある
耳の病気はわんちゃんが発症しやすいですが、見分ける事が少し難しい病気でもあります。耳垢や臭いに違和感があり、通常の動物病院に行ってもイヤークリーナーを渡されるだけだったが、皮膚科専門の動物病院に行ってみたら、外耳炎になっていることがわかった、という友人もいます。
もし、かかりつけの病院に行っても症状が良くならない時は、皮膚科専門もしくは皮膚病に強い病院を探して受診してみましょう。
愛犬の健康を守れるのは飼い主さんだけです。ずっと元気に過ごせるように、毎日のスキンシップを大切にして、不調のサインに気づいてあげましょう。