今や、飼っている犬も家族の一員となりつつある世の中です。あなたの愛するわんちゃんが、もしも、ある日突然、病気になってしまったら…その時、あなたはどうしますか?
大切に育ててきた愛犬が苦しんでいる姿を見て、少しでも痛みや症状を和らげてあげたいと思いますよね。そんな時に役立つのが、マッサージです!
「ええっ!? でも、マッサージって、『わんちゃんがリラックスしている時に行なう』ものなんじゃないの!? かえってストレスをかけちゃわないかな…。やり方が分からないよ。」と不安な、そこのあなた。
ご安心下さい!
ここでは5つの病気別に、ご自宅で簡単にできるマッサージのやり方をご紹介します。また、わんちゃんが他の病気になってしまった時にはどういう風に調べたらいいのかも、合わせてご紹介します。
愛するわんちゃんのために出来ること
マッサージで早期発見、早期治療
マッサージはわんちゃんに癒しを与え、あなたとの信頼関係を深めてくれるものです。毎日、マッサージしてあげましょう。普段からわんちゃんに触れることで、異変があった時に素早く気づくことが出来、病気の早期発見・早期治療に繋がります。
症状がない場合でも、マッサージやストレッチは、加齢によって衰えた筋肉への伝達機能を活性化してくれます。
また、関節を曲げ伸ばしする際に、自分の体のサイズや位置関係などに関する感覚が刺激されるので、認知症の予防にもつながります。
では、わんちゃんが病気になってしまった場合はどうでしょうか?
マッサージは、病気の愛犬と飼い主の心をつなぐ架け橋です
実は、病気のわんちゃんの方が、マッサージを必要としています!
例として、『股関節(こかんせつ)形成不全(けいせいふぜん)』になったわんちゃんの場合を考えてみましょう。発症は、早い子だと、生後5ヶ月。元気に遊びたい盛りです。しかし、走るどころか、歩くだけでも、時折、ビリビリビリッ!と強いしびれと痛みに襲われてしまいます。
わんちゃんには人間の言葉が理解できません。どうして急に症状が出たのか。いつまで苦しまなければいけないのか。誰にも教えてもらえないまま、毎日毎日、つらい症状を耐え忍ぶしかないのです。例え治る病気だとしても、不安がいっぱいで、一分、一秒が、さぞかし長く感じるでしょう。それが、股関節形成不全のように完治できない病気だとしたら…
考えるだけで、ゾッとしますよね。
肥満で発症したわんちゃんは、もっと可哀想です。少しでも股関節の負担を軽くして進行を遅らせるために、体重をもとに戻さなければいけません。運動が十分に出来ないので、食事制限をするしかないのです。
…ハッ!
もしかして優太君、ボクのことを嫌いになっちゃったんじゃ…!!
大好きだよ!!
でも、だからこそ、病気に負けないで、僕と一緒に戦ってくれないかな?
うん、僕、頑張るよ!
言葉にならないこの想いを届ける方法が、肌と肌の触れ合い、つまりマッサージです。
『病は気から』と言いますが、症状がつらいから孤独感や劣等感を抱えます。そうしたストレスによって、もっと病気が悪化します。すると、ますますわんちゃんは苦しんで… まさに、負のスパイラルですよね。この負のスパイラルを断ち切って、孤独の闇に落ちそうになっているわんちゃんを救える唯一の人…それが、飼い主であるあなたなのです!
また、マッサージをして血行を促進することで免疫力がUPし、自己治癒力が高まり、痛みを和らげてあげることが出来ます。
もしも、この記事をご覧下さっているあなたの愛犬が既に病気になっている場合は、今日からでも、遅くはありません! 早速、マッサージを始めましょう。ただしその場合、いきなりわんちゃんの患部に触れたりすると…
なんてことするのっ!
人の急所を攻撃してくるなんて、信じられないわ!!
もちろん、わんちゃんは怖がりますし、怒るでしょう。最悪、信頼関係にヒビが入ってしまうかもしれません。
まずは、患部には絶対に触らないで下さい。
「うちのわんちゃんが『気持ちいい』場所は、どこかなぁ?」と宝探しをするつもりで、毛の流れに沿って、ゆっくり優しくなでましょう。昔の人は、手を当てて温もりを伝えることを、『手当て』と呼んでいました。ぜひ、わんちゃんを手当てしてあげて下さい。あなたも、わんちゃんも、マッサージに慣れる所から始めましょう。
要注意! マッサージをしてはいけない時
下記の時は、マッサージをしてはいけません。
- ご飯前の空腹時
- 食後1時間以内
- お散歩をしてすぐ(クールダウンのマッサージを行なうときも、わんちゃんの呼吸が落ち着くまで待ちましょう)
- わんちゃんがマッサージを嫌がった時(そもそも体を触らせてくれなかったり、体をこわばらせて緊張したままの時)
- わんちゃんが怪我をして、炎症が治まっていない時
- わんちゃんに熱がある時
- わんちゃんがガンになってしまった時
基本的な犬のマッサージのやり方
マッサージの準備をしよう
マッサージは、あなたの心と時間に余裕のある時に行いましょう。忙しい時に「毎日やらなきゃ!」という義務感だけで行ってはいけません。あなたの落ち着きのない心が、そのままわんちゃんに伝わり、わんちゃんは余計にどうしたらいいか分からなくなってしまいます。
マッサージを行なう時には、下記の準備をしましょう。
1)わんちゃんを傷つけないように、爪が伸びていないことを確認し、指輪や腕時計、ブレスレットなどを外す
2)手を温める
冷たい手で触ると、筋肉が固くなってしまいます。電子レンジで温められるカイロを使って手を温めましょう。関節炎を患っているわんちゃんや、足腰の弱ったシニア犬をマッサージする時には、わんちゃんの関節も一緒に温めて下さい。
4)静電気が出ないように工夫する
静電気の「パチッ!」という刺激は、誰でも嫌なものですよね。衣服がわんちゃんにこすれないように腕まくりをし、手が乾燥している時はハンドクリームで保湿しましょう。静電気防止用のグッズを使ってもいいですね。
5)落ち着ける環境を作る
わんちゃんは気持ちよくなると、ごろんと横になったり、お腹を見せます。その時に関節を痛めてしまわないように、あらかじめ犬用のベッドを敷いて誘導し、横になれる環境を作ってからマッサージを始めましょう。
(1つ目の画像をクリックして下さい。現れるBOXの中の矢印をクリックすると、続けて次の画像をご覧になれます。)
引用:JoicyCo 犬 ベッド ペットマット 犬 マット クッション 犬ケージ用敷物 滑り止め ペットベッド 洗える 取り外せるカバー 冬用 通年使える 5カラー3サイズ選択可 (ベージュ L)
足腰の弱ったシニア犬や股関節に炎症を起こしているわんちゃんにとっては、ベッドへの移動も一苦労。見守っている飼い主さんも、「万が一、足を滑らせたら…」と、ハラハラしますよね。その点、こちらのベッドなら、滑り止め防止がついているのでずれないし、段差が低いので安心です。また、傷んだ脊椎や関節を柔らかく包み込める、弾力性に優れたマットです。
わんちゃんが痛みで神経質になっている時は、犬用のヒーリングミュージックを流して落ち着かせましょう。CDも売られていますが、「いざ買ってみて、気に入ってくれなかったら嫌だな…」とご心配な方は、Youtubeで好みの音楽を探してあげましょう。わんちゃんは聴力に優れているので、聞こえるか、聞こえないか程度の小さなボリュームでかけるのがコツです。
ふかふかベッドに、静かな音楽、優しいマッサージ…
はぁ、しあわせ~♪
さぁ、マッサージを始めよう!
病気のわんちゃんに行う場合でも、マッサージの基本的なやり方は、ほぼ共通です。とにかく優しく! 丁寧に! マッサージをしてあげましょう。
こちらの動画では、わんちゃんのリンパマッサージの方法についてご紹介しています。解説付きでゆっくり行っているので、マッサージ教室に通っている気分でイメトレ出来ます。(途中で他の犬の吠え声が入っていますので、びっくりなさらないようご注意下さい。)
でも難しい場合は、本番ではスマホで流し、片方の耳にイヤホンをつけて聞きながら行ってみてくださいね。
上記をベースに、これからご紹介していくマッサージのポイント箇所を重点的に行います。わんちゃんが嫌がっていないか、痛がっていないか、十分に気をつけながら行って下さい。
要チェック! 声に出せないわんちゃんの『STOP』サイン
って言いたいけど、優太君は、ボクのためにやってくれてるんだよね。
どうしよう、困ったなぁ…)
ふぁぁぁぁ~…
わんちゃんは困った時に、あくびをします。もちろん、マッサージで気持ちよくて「おやすみ~」っていう時にもあくびをします。慣れるまでは、どちらのあくびなのか見極めるのはなかなか難しいかもしれませんね。嫌な時の分かりやすいあくびのサインは、次の2つです。
- 落ち着きなく、連続で、あくびをする
- あくびをした後、体中の毛をブルブル震わせる
また、次にあげるサインは、わんちゃんの『STOP』の緊急サインです。『今日の炎症具合は激しい』ということを示しています。ただちに触るのをやめましょう。優しく頭をなでて落ち着かせます。
- マッサージをしている最中に、ビクッ!と体をすくませる
- やっている所を、驚いたように、バッ!と見る
(痛みが出た合図。「キャン!」と鳴いたり、歯をむき出す時もあります)
股関節がギシギシ痛んで歩けない! 股関節形成不全の犬のマッサージのやり方
股関節(こかんせつ)形成不全(けいせいふぜん)って、どんな病気?
文字通り、太ももの骨と骨盤を繋ぐ『股関節』の『形成』が『不全(不完全)』な病気です。
右図のように、太ももの骨【大腿骨(だいたいこつ)】の先端【大腿骨頭(だいたいこつとう)】は、ボールのような形をしています。それを包み込めるように、骨盤にはグローブのようなくぼみ【寛骨臼(かんこつきゅう)】があります。
しかし、股関節が発達する時、2つの骨の発育がアンバランスになることがあります。大腿骨頭の先端が尖ったり、寛骨臼が浅くて大腿骨頭を包みきれなかったりします。体重が12kg以下のわんちゃんでは、この病気になっても、ほとんど症状が出ませんが、大型犬の場合、歩いている時などに2つの骨がこすれると、強烈な痛みに襲われます。
成長するにつれて炎症がひどくなり、しまいには、股関節がゆるんだり、脱臼(だっきゅう)を起こしてしまいます。
なりやすい犬種と、発症時期
ゴールデンレトリバーや、ラブラドールなど、大型犬に多く発症します。
早ければ生後5ヶ月~8ヶ月で発症しますが、通常は
- 生後6ヶ月~1年
- 2歳以降
の2パターンです。
原因
原因の7割は遺伝ですが、あとの3割は、太り過ぎが原因です。特に骨が発達する生後1歳までは、太らないように、食事の量や運動量に注意しましょう。
あなたの愛犬は大丈夫? 病気チェック
股関節形成不全は、完全に治る病気ではありません。しかし、早期発見・早期治療することで、日常生活に支障がないレベルまで回復することが可能です。
- 横坐りする
- 素早く立ち上がる事ができない
- 腰を振って歩く
- 歩いている時に、うさぎのように、両方の足を同時に、ぴょんっ、と持ち上げることがある
- 散歩の途中で「キャン!」と悲鳴を上げたり、座り込んだりする
- 寝ていることが多く、運動したがらなくなった
マッサージのやり方
①血行を促進して痛みを緩和する
全身マッサージをして血行を促進し、ガチガチにこわばった筋肉をほぐしてあげることが大切です。体がリラックスすれば、痛みの軽減にもつながります。
また、血行を良くし、ストレスを緩和するツボとして、『風池』がおすすめです。首の両脇のくぼみにあります。(動画で、【こうじん】と呼んでいるところです)親指とひとさし指を使って、1回20~30秒 × 5~10回くらいを目安に、優しくもんであげましょう。
②重点ポイントは、足
足のマッサージを重点的に行なって、固くなった筋肉を柔らかくしてあげましょう。わんちゃんを横向きに寝かせて、太ももの裏をもんでいきます。また、寝かせた状態で、足を、ゆっくり持ち上げたり下ろしたりするだけでも、リンパの流れが良くなり、可動域が広がります。
- お散歩の前後にマッサージをしてあげると、コリがほぐれて動きやすさがUP!
- 症状の強い時は、なでるくらいで丁度いい
足が麻痺(まひ)して動かない! 変形性脊椎症の犬のマッサージのやり方
変形性(へんけいせい)脊椎症(せきついしょう)って、どんな病気?
『脊椎』は『背骨』とも言いますが、わんちゃんの場合、首からしっぽまでつながっています。ちくわのように中は空洞になっており、脳からの司令を体に伝えたり、逆に、体が感じたことを脳に伝える『脊髄(せきずい)』という大切な神経を守っています。『変形性脊椎症』は、ガードしている『脊椎』が、トゲのように『変形』してしまう病気です。
脊髄の下に出来たトゲは、やがて橋のように連なります。わんちゃんは機敏でしなやかな動きを奪われてしまいます。しかし、痛みはありません。本当に恐ろしいのは、脊髄に向かってトゲが出来た時です。ガードするはずの脊髄を圧迫したりして攻撃するので、痛みやしびれが発生します。『股関節形成不全』とは違い、ずっと続く痛みです。
圧迫され続けた神経は、しまいには切れてしまい、脳に感覚を送れなくなります。脊椎の障害部位からしっぽにかけて症状が出るため、首の骨【頚椎(けいつい)】がやられると、両方の手足が麻痺し、寝たきりになってしまいます。しゃがむことが出来なくなるので、自力でトイレすることも出来ません。
症状が出ていなくても、わんちゃんがシニア期(7~8歳)に入ったら、脊椎も含めて毎年きちんと検査を受けましょう。
なりやすい犬種と、発症時期
9歳以上のわんちゃんの75%が発症します。
また
- ボクサー犬
- ダックスフンドなど胴が長くて足の短い犬種
は、若くてもこの病気にかかりやすいです。
原因
老化が主な原因ですが、下記の場合、発症時期が早まることがあります。
- 交通事故など、大きな外傷を負った
- 太り過ぎで、必要以上に背中へ負担をかけ続けた
- 運動不足で、背中の筋肉が必要以上にやせ衰えた
- 背骨に負担のかかる運動をし過ぎた
あなたの愛犬は大丈夫? 病気チェック
- 体がこわばっている(ロボットのようにカクカクした動き方をする)
- しっぽを振らなくなった
- 歩き方がぎこちない。びっこをひく
- お散歩するのが嫌いで、一日中、寝てばかりいる
- 背中や腰が、曲がっている
- 腰やお尻を触ったり、抱き上げようとすると痛がる
- 怒りっぽくなった(シニア期の健康なわんちゃんは、のんびりと構えており、多少のことでは動じません)
- 階段がのぼれない
変形性脊椎症のわんちゃんのマッサージのやり方
片足を上げる、引きずる…膝蓋骨脱臼の犬のマッサージのやり方
膝蓋骨(しつがいこつ)脱臼(だっきゅう)って、どんな病気?
膝のお皿の丸い骨【膝蓋骨(しつがいこつ)】は、膝にフタをする形で、前方からの攻撃から膝を守っています。正常な場合は太ももの骨の溝【滑車溝(かっしゃこう)】にきちんとはまっていて、膝の動きに合わせて上下にスライドします。膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨が脱臼して、正常な位置からずれる病気です。膝蓋骨そのものや、膝蓋骨脱臼のことを『パテラ』とも言います。
症状は、以下の4つのグレードに分けられます。
(クリックすると画像が拡大されます)
膝蓋骨が脱臼すると強い痛みが起き、膝を曲げ伸ばしすることが出来なくなります。しかし、ステージⅠやⅡでは、自分で脱臼を治してしまうわんちゃんが少なくありません。脱臼した方の足を上げてジャンプしながら、脱臼した足を数回振るのです。ケンケンしているように見えます。飼い主さんが気づくのは難しく、子犬の時の健康診断で分かることが多いです。
しかし、軽度の脱臼を繰り返しているうちに、関節炎に発展する危険性があります。また、脱臼した足をかばって歩くので、反対側の足に負担がかかり症状が悪化することもあります。自然に治ることはなく、次第に筋肉が萎縮し、骨格が変形して、さらに脱臼しやすくなります。グレードⅢまでに手術が必要です。
なりやすい犬種
走り回るのが好きでやんちゃな超小型犬~小型犬
- トイプードル
- ポメラニアン
- チワワ
- ヨークシャーテリア
- パピヨン
- マルチーズ
メスはオスの1.5倍、発症しやすいです。上記のわんちゃんは膝蓋骨が内側にはずれることが多いです。
マルチーズの女の子って、私のことじゃない!!
うわぁ、どうしよう…(@_@;)
ラテは、子犬の検診の時には異常なかったよ。
これからも、ベッドやソファーから飛び降りないでね。
ダッシュしてる途中で、急に方向転換するのもダメだよ。
中型犬や大型犬も、まれに膝蓋骨脱臼になります。この時は、膝蓋骨が外側にはずれることが多いです。
原因
【先天性】
- 太ももの滑車溝が浅い
- 膝蓋骨を支える筋肉や靭帯(じんたい)がきちんと発育できなかった
- 後ろ足の骨の変形、成長異常
子犬の時から発症したり、成長途中で発症することがあります。
【後天性】
- 交通事故
- 高いところから飛び降りたり、ジャンプした
- 派手に転んで打撲した
- フローリングの上で生活しており、足を滑らせたり、滑らないよう踏ん張っている
- 急激に方向転換した
- 太り過ぎによる膝への負担
あなたの愛犬は大丈夫? 病気チェック
- 遊んでいる時に「キャン!」と悲鳴を上げる
- 3本足でスキップするように歩く(自分で脱臼を治している状態です。)
- 立っている時に、足をガクガクさせている
- 足をひきずる
- 後ろ足を伸ばす(脱臼した骨を自分でもとの位置に戻しています)
膝蓋骨脱臼のわんちゃんのマッサージのやり方
犬によってはガニ股や内股になっている場合があるので、足の筋肉の始まりから終わりを意識してマッサージし、足の筋肉を緩めることが重要です。
【 内股のわんちゃん向け 】
【 ガニ股のわんちゃん向け 】
- 【共通】座骨の位置を確認する
- 内股のわんちゃんには、膝蓋骨と頸骨中央の突起を確認する
- ガニ股のわんちゃんには、半腱様筋(はんけんようきん)とそのすぐ隣にある薄筋(はっきん)を2つまとめてマッサージする
まぶたが腫れた! マイボーム腺炎の犬のマッサージのやり方
マイボーム腺炎(せんえん)って、どんな病気?
マイボーム腺は、まつげの生え際(まぶたのふち)にズラッと並んでいます。まばたきをすると、涙が出るとともに、このマイボーム腺から油が分泌されます。涙に油を混ぜることで、涙の蒸発を防ぎ、目が乾かないようにしているのです。目を開けたり閉じたりする時の滑りも良くしています。マイボーム腺炎には、2つの種類があります。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
人間でいうものもらいです。マイボーム腺に細菌が入って炎症します。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)
マイボーム腺から出る油の通り道がふさがって、つまってしまった時に起こる炎症です。慢性的な病気で、一度治っても、ニキビのように繰り返し発症することがあります。
発症時期や、なりやすいわんちゃん
- 子犬の時や、体調不良の時など、免疫力が弱い時
- アレルギー体質のわんちゃん
あなたの愛犬は大丈夫? 病気チェック
【共通】
- ぷくっと赤いしこりが出来る(いくつか同時に出来る時もあります)
- 涙が多くなる
- 目やにが出る
- かゆくなる
【麦粒腫(ばくりゅうしゅ)】
目の周りが大きく腫れ上がる
【霰粒腫(さんりゅうしゅ)】
- まぶたのふちが赤く腫れる
- 外側だけではなく、内側にもしこりが出来る
かゆくて前足でこすったり、まぶたを床にこすりつけたりするわんちゃんは、角膜が傷つかないよう、エリザベスカラーをつける必要があります。なお、人間のものもらいと同様に、わんちゃんのものもらいも他の犬へは移りませんので、ご安心下さい。
マイボーム腺炎(霰粒腫)のわんちゃんのマッサージのやり方
霰粒腫(さんりゅうしゅ)になったわんちゃんは、マッサージして強制的にまばたきさせ、詰まっているものを取り除いてあげる必要があります。
- 両手を熱めのぬるま湯で、温めながらきれいに洗う
- わんちゃんのまぶた(真ん中じゃんなくてもOK)を親指と人差し指ではさみ、まばたきするように動かしてあげる
- 手のひらでわんちゃんのまぶたをしばらくおおって温めてあげると詰まりが取れる
- やる時間やタイミングはいつでもOK! 気がついた時にやってあげる
ぐるぐると目が回るぅ~! 前庭疾患の犬のマッサージのやり方
前庭疾患(ぜんていしっかん)ってどんな病気?
『前庭疾患』とは、『前庭』という平衡感覚をつかさどる領域が侵されることにより神経症状が現れる病気です。体の位置関係を脳に伝えることが出来なくなり、平衡感覚が分からなくなります。ジェットコースターなどに乗った時の乗り物酔い、もしくは、ひどく酔っぱらった時が、ずっと続く…とイメージすると分かりやすいです。
前庭は耳の奥の末梢前庭と、脳の中の中枢前庭に分けられます。症状は共通していますが、原因や治療の仕方については大きく異なります。
中枢性の前庭疾患だと恐ろしいことになるので、一刻も早くかかりつけ医に連れて行って下さいね!
末梢性 前庭疾患(まっしょうせい ぜんていしっかん)
わんちゃんの耳の奥には、『内耳(ないじ)』という骨があります。その中に、『蝸牛(かぎゅう)』と、『三半規管(さんはんきかん)』があります。
上の図のように、『蝸牛』の先には音を伝える『蝸牛神経』がついています。一方、『三半規管』の先には『前庭神経』がくっついていて、体の位置を脳に伝え、体を正しくコントロールする役割を果たしています。これらを合わせて『末梢前庭』と言います。主にかかりやすいのは、『末梢前庭』に起こる疾患です。
- 中耳炎、内耳炎
- 特発性前庭疾患…あらゆる年齢で発症しますが、シニア犬に多いです。原因不明の前庭疾患をまとめてこう呼びます。
突発性前庭疾患の場合、対処療法しかありませんが、早期発見・早期治療できれば、多くが7~10日で回復できます。ただし、捻転斜頸(ねんてんしゃけい)は残ることが多いです。
中枢性 前庭疾患(ちゅうすうせい ぜんていしっかん)
脳幹や小脳にも前庭神経が走っています。ここが病気になった場合は、『中枢性 前庭疾患』と呼びます。
- 髄膜脳炎(ずいまく のうえん)
細菌感染による場合と、原因不明の場合の、2パターンがあります - 小脳梗塞(しょうのう こうそく)
小脳の血管がつまってしまう病気です。シニア犬に多く、意識障害も伴います。 - 脳幹にガンが出来た場合
末梢性 前庭疾患に比べ、中枢性 前庭疾患は緊急性と重要度が高いです。治りにくかったり、後遺症が残る確率が高いです。
あなたの愛犬は大丈夫? 病気チェック
- 捻転斜頸(ねんてんしゃけい)…首が片方に傾いたり、片方の目の位置が下がっている
- 眼球が小刻みに揺れたり、グルグル回る(ひどいめまいを起こしている状態です)
- よろめいたり、ふらふらする
- まっすぐに歩けず、その場でぐるぐる回る
- 立っていられず、倒れてしまう
- 酔って吐いたり、食欲がなくなったりする
前庭疾患の治療後、後遺症が出てしまったわんちゃんのマッサージのやり方
前庭疾患が治るまでは安静が必要ですが、治った後は、失われてしまった体の位置感覚を取り戻すトレーニングが必要です。マッサージで癒やしながら、根気強く行いましょう。
- 横たわっている時間をできるだけ減らしてあげる
- ストレッチやマッサージは毎日してあげる(前肢、後肢、首、背中など)
- 歩行補助ハーネスを使って立っている感覚を刺激する ⇒ タオルでの代用可能
オススメ! 歩行補助ハーネス
大型犬を解除するなら、アイアンバロンの『後ろ脚付き 着たままねんねのハニカムつなぎ』がおすすめです。名前のとおり、24時間つけっぱなしにしてもひもがゴロゴロせず、風を感じられるほど通気性が良いです。
(左上の画像をクリックすると、大きなBOXが出現します。BOX内の矢印を押していくと次の画像を見ることが出来ます)
特にオス犬にはおすすめ。U字カットされているので、わんちゃんのおちんちんが出るのを邪魔しません。さらに、股ぐりベルトが股の開きをしっかりサポートしてくれるので、マーキングする練習にぴったりです。
情報はどこから得るのが一番いいの?
これが、いろいろな病気とマッサージのやり方を調べた、率直な感想です。愛犬にとってどのやり方が良いのか。そもそも何をしてあげたら良いのか…
数え上げるときりがなく、取捨選択は必須です。上記とは別の病気になった時でも慌てずにすむように、もう一度、リサーチ方法を一緒に考えてみましょう。
いつでもどこでも情報収集! インターネットを駆使しよう
今や情報を調べる上で一番使うと言っても過言ではないインターネット。検索すればいろんな情報が出てきますよね。いつでもどこでも何度でも、簡単に調べられることが最大のメリットです。
Youtubeなどの動画共有サービスを使って、詳しいやり方を見ながら、わんちゃんにやってあげることも出来ます。「私は愛犬にこんな風にマッサージしています!」と、こちらから情報発信することも出来るので、全国のいろんな飼い主さんがお世話になっているのではないでしょうか。
また、SNSなども駆使して賢く情報共有することもできるので便利ですよね。
インスタグラムも利用者が増えているので、ハッシュタグを使って検索すれば同じ境遇の人を見つけやすいのではないでしょうか。
大事な所はグリグリチェック! マーカー片手に専門書を読み込もう
大切なことは分かりやすく、マーカーでチェックしたい。
そんな人は、専門書から情報を得ることをおすすめします。しおりをはさめば、必要な部分だけすぐに見ることが出来ます。本屋さんでパラパラめくれば、自分に合った分かりやすい本も探せますよね。なによりも“獣医師監修”の本もありますので安心です。
わんちゃんのマッサージについて書いている本で私がおすすめしたい本は、『メンテナンスドッグマッサージ 愛犬のコリ・痛みを最短10秒でほぐす! 【基礎編】』です。著者の櫻井裕子さんは、一般社団法人『ペットマッサージ協会』の公認講師さん。名古屋ZIP‐FMで1年間ドッグマッサージ解説コーナーを担当したこともある方です。
- 背骨の両側を触って筋肉が硬くなっていないかをチェックする
- こり固まって動かない足腰の筋肉を動かしやすくしてあげる
- 無理しない程度の適度な運動を心がける
ドキドキ♪
ちょっと怖いけど、楽しみだなぁ!
痛いのは嫌だから、優しくしてね?
優太君、たぁっっぷり、お願いね♡
二人とも楽しみにしてくれてるから、頑張ってマスターするぞ!
けど…
こら、ラテ!
僕はキミの執事じゃないぞ?
(もう、せっかく可愛くおねだりしたのにー!)
本と、インターネットの動画の、良いとこ取りをしてもいいですね!
身近な存在! あなたの周りのペット友達
ペット友達がいる飼い主さんにとっては、お友達に相談するのが一番なのではないでしょうか?
愛犬のことや、あんなことやこんなことなど、リアルタイムでどんどん質問して深く情報交換することができます。気心の知れた友人の実体験なら、安心して信用出来ますよね。悩みや喜びを分かち合えば、ストレス解消にもなります。
人間同士が仲良くおしゃべりしている間に、愛犬同士もコミュニケーションが取れるので、「いつの間にか愛犬が人見知りしなくなっていた」なんてこともあるかもしれません。
一石二鳥、いや、一石五鳥くらいあるかもしれませんよ!?
愛犬のこと以外にも、ふとしたことが役立つこともあるので、本当に助かっています!
苦手なことは得意な人に聞こう! スペシャリスト活用術
スポーツでも勉強でも、分からなければその分野の専門家に聞くのが一番です。動物に関して言えば、獣医師さんですね。
いろんなお友達と情報共有していたり、本やインターネットで調べた情報の裏付けを取ることが大切です。自分では気づかなかった所も「なるほど!」 と納得することが出来、より一層、深い知識を得られますよね。
病気に関して調べるなら、一番確実な方法と言えますね。
1人で解決しようとしないで、お気軽にご相談くださいね。
愛犬が病気になった時は電話相談も受け付けていますので、お気軽にどうぞ♪
それに、地域によっては、ドッグマッサージのセミナーなどを行っている所があるんですよ。
病院だけじゃなく、ペットに特化した整体をしているクリニックでも行われています。
当院でもやっているから、優太君も一度、来てみてごらん♪
セミナーなら行きやすいですね♪
ラテやマロンのためにも、予防のために講習会やセミナーに行ってみようかな。
もしかしたらそこで、新しいお友達ができるかもしれないしね!^^
先生、どうもありがとうございます!
つくりたい!
遊びたい \(^o^)/♪
大丈夫かな?
さぁ、お家に帰って、早速調べてみよう!
まとめ
では、ここまでの内容を簡単におさらいしていきましょう。
- 日頃のマッサージで早期発見・早期治療。
また、病気になったわんちゃんの心に寄り添い、痛みを緩和することができます。 - マッサージの基本は共通。『優しく、丁寧に!』を忘れずに。わんちゃんのSOSサインにも注意しましょう。
- わんちゃんが股関節形成不全になったら、マッサージで全身の血行を促進してあげましょう。
- 変形性脊椎症の場合は、肩関節や股関節を重点的にマッサージして、脊椎への負担を減らしましょう。
- 膝蓋骨脱臼の場合は、内股かガニ股かによって、マッサージ方法が違ってきますので注意して下さい
- マイボーム腺が詰まってしまった場合は、まぶたのマッサージで詰まりを解消してあげましょう。
- 前庭疾患のわんちゃんの場合は、マッサージで癒やしながら歩行訓練を頑張りましょう。歩行補助ハーネスが役立ちます。
- 情報の取得方法は様々です。マッサージを行う場合は、獣医師さんに教えてもらってから行ってみてください。間違ったまま覚えるのだけは避けたいですね。
犬にもいろいろな病気があり、マッサージ1つとっても、どこにアプローチしていくかが大切です。いろいろなマッサージを通して、愛犬とのコミュニケーション、ペット友達との情報共有、ネットワークを駆使して視野を広げる、など可能性は無限大ですよね。
また、関節炎に共通の原因は、遺伝を除くとその多くが「肥満」です。適度な運動と食事管理を心がけてください。室内で飼う場合は、必ずじゅうたんを敷きましょう。フローリングだと足を滑らせて関節を痛めてしまいます。
わんちゃんといつまでも一緒にいたいから、できることから始めましょう。私自身、マッサージや病気に関することを知る良い機会になりました。これからもっともっといろんなことを知っていきたいです。
あんなに楽しそうに、飛んだり、走ったりしちゃってさ。
あぁ、どうしてボクだけこんなに痛くなるんだろう…