最近はペットを飼っている人も増えているので、犬の健康についての関心も非常に高くなっていると思います。
動物病院も人間の病院と同じで基本的に西洋医学に基づいておりますので、急性疾患には強みを発揮しますが、慢性病的な症状への対応はあまり得意ではありません。
最近は動物病院も充実しているので、犬に与える食事もお腹いっぱい好きなだけ食べさせて何かトラブルがあれば医者任せ、的な発想になってしまうかもしれません。でもそれは危険です。
肩こりや腰痛を治せる薬が無い、と言えば理解が早いと思いますが、慢性病は日々の積み重ね、生活習慣に由来しますので長期的な生活の質の向上という観点からは、健康的な食生活や愛犬へのマッサージなどの日常生活の見直しの方がより重要になってきます。
今回は犬によくあるお腹のトラブルと病気について、家庭で出来るケアを含めてご紹介します。
おならの対策に必要なのはマッサージじゃない?
おならの原因も様々ですが、ここでは日常生活でありがちな例について挙げます。
それ病気じゃないよ ああガス抜きしたい!
例えば食事の時には、多かれ少なかれ食べ物と一緒に空気も取り込みます。特に食べるのが早いわんちゃんほどその傾向が強くなります。
こうしてたまったガスが、体外におならとして排出されます。この場合は空気がほとんどなので臭いも少ないでしょう。このようなおならは内臓に問題があるわけではないのであまり気にしなくてもよいです。
しかしおならを頻発するほど早食いするのはよろしくありません。空気を肺ではなく食道から胃に飲み込むのを呑気と言いますが、これが過ぎるとお腹がパンパンになっておならやげっぷが頻発したりで、わんちゃんもかなり苦しくなります。
呑気症といって病気のように扱われることもありますが、空気を飲み込むのもそれでお腹が膨らむのも、それ自体は全く普通のことで異常ではありません。でも程度が過ぎると結構大変なのもまた事実。ですからあまり甘く見ない方がいいです。
対策は簡単で、食事を一度にたくさん与えず小分けにするだけでもある程度改善します。ゆっくり食べるように工夫された食器の便利グッズもありますから、そちらも試してみると良いかもしれません。
- 早食い防止の食器
食器に突起がつけてあって、その中からフードを探し出して食べるようになっています。食器の素材は有害物質不使用ですから噛みついても安心です。早食い防止にご検討ください。
臭いの犯人はどこに? 腸内細菌が生成するガス
わんちゃんの腸内に残っている、消化しきれなかった食物繊維や食べ物の残りかすが腸内の細菌に分解されますが、その過程でガスが発生します。
食事が体に合わなかったり、必要以上に食べ過ぎてしまって消化できないと、残った食べ物が腸内の悪玉細菌の栄養分となって悪臭を放つガスを発生させるのです。
おならが腐ったゆで卵のような臭いがするなら、それは腸内で悪玉菌が活性化して硫化水素ガスが発生している証拠です。便秘や下痢を起こす前兆でもよく見られます。
食事量が適正なのにおならが臭くて回数が多いなら、食事の質の問題が考えられます。サプリを混ぜてみたり良質なフードに切り替えるのも良いでしょう。
食事が肉ばかりに偏っているなら、野菜やふかしたイモ、海藻類など食物繊維を多く含む食べものを少量与えてみると改善する可能性があります。
- おならの臭いに効くサプリ
わんちゃんの腸内環境を整える効果が期待できるサプリがあります。与え方はとっても簡単で毎日のご飯に少量混ぜるだけです。このサプリでフードの味が変わることもないので、わんちゃんへの負担もほぼありません。是非ご検討ください。
犬もストレスは腹に来る
わんちゃんもストレスを感じると、お腹の具合が悪くなってガスが溜まることがあります。緊張状態が続くと自律神経が乱れて、腸の消化運動が阻害されてしまうのです。原因は引っ越しによる住環境の変化や家族との分離、食事や散歩などの生活習慣の急変、来客や大きな音など様々です。
特にわんちゃんの生活環境が大きく変わるような時は、十分気を付けてあげてください。
犬種による
体の構造的に鼻呼吸が下手な短頭種のわんちゃんは空気を飲み込みやすいです。また太っていると、少しの運動ですぐに呼吸が乱れ、口呼吸が多くなるため空気を飲み込みやすくなります。
- ボクサー
- ボストンテリア
- 狆
- 老犬
おならが頻繁に出る食べ物
わんちゃんにとって乳製品は消化不良や、アレルギーも引き起こしやすいので与え過ぎには注意してください。食物繊維を多く含む食べ物も摂りすぎると、かえって腸内菌を活発化させておならの回数が増える原因となります。
それでもだめならマッサージ
犬種や個体差の問題もありますので、基本的なケアは怠らなくてもどうしても空気を飲み込んでしまったり、消化不良をおこしたり、ストレスでやられてしまったり、などといったケースはよくあります。それならば、いよいよマッサージにも挑戦してみましょう。
ツボ押しの基本
■まずは愛犬をリラックスさせて
マッサージは犬がリラックスした状態で行うことが大前提。犬がさわられて気持ち良さそうにする場所を撫でて、心を落ち着かせてあげよう。
■指圧は指で押すのが基本
指圧という名の通り、ツボは指で押すのが基本。場所によって親指か人差し指で行う。実の状態のときは強く短く、虚の状態の時は優しく長く押す。
■細かい場所は綿棒で押そう
場所によってはツボを指で押すのが困難なこともある。細かい場所のツボは綿棒を使ってピンポイントに指圧を行うといい。
■手軽なピックアップも
ツボ周辺の皮膚を引っ張って刺激する、ピックアップという方法もある。ツボをピンポイントでとらえなくても良いので手軽に行える。
■円マッサージも利用しよう
ツボ周辺に指をあてながら、円を描くようになでる円マッサージも効果的。指圧よりも刺激がゆるやかで、スキンシップの時間に取り入れやすい。引用:Shi-ba
マッサージでは手に負えない重大な病気
臭いおなら やっぱり病気?
おならの問題が生活習慣やストレスによる一時的な変化によるものなら、それらを改善することで大体は解決します。しかしそうした改善をしたにもかかわらず臭いおならを頻繁にするようなら、これはいよいよ病気の可能性を疑う必要があります。
消化器系疾患の前兆としては、おなら以外にもお腹が膨らむ、お腹が鳴る、下痢や軟便、嘔吐、食欲低下、急な体重の減少、突然の元気消失、などが見られます。
これらの症状が見られるなら、迷わず動物病院での受診をお勧めします。
- 腸炎(大腸、小腸)
- 腸内腫瘍(大腸がん、直腸がん)
- 胃炎(慢性胃炎)
- 膵臓の炎症
腹水でお腹パンパンは怖い
わんちゃんのお腹が急にぱんぱんになって来たな、と思ったら腹水の可能性があります。腹水は血液の成分がお腹の中に染み出してきて溜まる水のことです。主に病気が原因ですが、事故などで負った外傷から発生することもあります。
- 循環器系の疾患
心臓病、心臓に寄生するフィラリア症。
- 消化器の疾患
血液中のたんぱく質が少なくなる、蛋白漏出性腸炎。
- 胃拡張、胃捻転
飲食物を一気に食べた後にすぐ運動すると起こりやすい。
- 子宮蓄膿症
子宮に膿が溜まる。元気なく食欲低下。頻繁に水を飲み、排尿する。
- 腹腔内腫瘍
体内の腫瘍は症状が進行するまで気づかない事が多い。腹水を病理検査して癌かどうかを判断する。腫瘍は犬の死因の第一位。
- 肝臓病
肝機能が低下すると腹水がたまりやすい。肥満が原因。
- 外傷
交通事故や高所からの転落で臓器が損傷する。お腹の中に血液がたまる。貧血、ふらつきがある。手術が必要な場合もある。
腹水がたまるような状況は重大な疾患の可能性が高く非常に危険な状態と考えられます。特に急におなかがパンパンになって来たような場合は、一刻も早く動物病院へ行きましょう。
腹水やむくみを軽くしたい 家庭で出来ること
病気が進んで来ると、わんちゃんも腹水やむくみで体がつらくなってきます。しかし腹水を直接抜くには注射針を刺すという外科的な処置が必要なので、動物病院でやってもらうしかありません。
利尿剤を処方してもらうこともできますが、そのほかに家庭で出来る事としては膀胱関係のツボを刺激して排尿を促すことです。これで間接的に腹水や手足のむくみをある程度改善できる場合があります。
わんちゃんの背骨のラインに沿って、腰からお尻の間には消化関係のツボが集中しています。膀胱兪(ぼうこうゆ)はその名の通り膀胱を刺激しますので利尿作用が期待されます。
大腸兪(だいちょうゆ)、関元兪(かんげんゆ)、小腸兪(しょうちょうゆ)は便秘や消化不良など腸のトラブルに効果があります。これも膀胱兪と併せて刺激すると効果的です。
おしっこが出るツボ
まとめ
犬のお腹のトラブルについてご紹介しました。
- マッサージはご飯の食べ方や消化不良、ストレスなど日常生活に由来するおなら問題の対処としては有効
- 生活習慣に問題がないのに臭いおならが続くなら病気の可能性を疑う。急にお腹がパンパンになったらすぐ動物病院に行く
お腹のトラブルというのは大体が日常生活に由来することが多いようです。早食いすれば空気を飲み込んでおならの回数を増やすし、食の偏りは腸内環境の悪化に直結し、それはおならの臭いという形ですぐに表れます。
ストレスの問題にしてもそうですが、日常的な問題は飼い主がちょっと気を付ければ防げることが多いです。
一方でおならは生活習慣の改善で解決するのと、病気で獣医にかかる必要がある場合の判断が結構難しいのかな、と思いました。様子見していたらあっという間に腹水でお腹がパンパンになって、重篤な状態になってしまうという可能性もあり得るからです。
ですから生活習慣の改善は前提として、今までと違うな、と感じたらまずは動物病院で診てもらうのが安全だと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。