夏の暑い時期、犬の散歩は皆さんどうしていらっしゃるでしょうか?
近年、夏の暑さがどんどん厳しくなって来ているようで、毎年少なからずの熱中症患者が発生しています。緊急搬送される人の数も2010年以降急増しています。
でも人間より暑さに弱い犬にとって、状況はさらに深刻です。1年中毛皮を着たままのわんちゃんにとって、日本の夏はあまりに過酷な環境なのです。
外出時に人間が感じる温度と、犬の感じている温度にかなりの違いがあるのをご存知でしょうか? もしそのことを知らずに夏に犬を散歩させると、取り返しのつかない大変な事態になる可能性があります。
今回は夏に犬の散歩をする場合の注意点についてまとめました。
犬には過酷な日本の夏

真夏は日中の気温が35℃を超える日も珍しくありません。そのような猛暑の日は出来るならわんちゃんも人間もなるべく外に出ないほうがよいです。こんな時期は暑さでバテてぐったりしている事も多いですから、そんな時にわざわざ無理して散歩に行く必要もありません。
地表付近の気温は遥かに高い
天気予報の気温は、気象庁が、地上からの高さ1.5メートルで風通しが良く、直射日光が当たらないという、ある意味理想的な環境の中の観測所で測定しているものです。
ですから夏に最高気温35℃という時それは、地上1.5メートル付近の気温を意味しています。
しかし飼い主はこの数字に騙されてはいけません。同じ場所でも日なたの道路上であれば、地上1.5メートル付近に比べて、地表付近の温度は20℃以上も高くなることがあります。
何故かというと、道を覆っているアスファルトやコンクリートは、夏の猛烈な太陽光線にさらされて熱をたっぷりと吸収します。その結果アスファルト表面の温度はピーク時には65度を超えるまで上昇することもあります。
つまり夏のアスファルトは、熱源と考えていただければ解りやすいと思います。気温は熱源に近いほど高くなります。そしてその温度はわんちゃんのいる地表数十センチ付近では50度を軽く超えてしまうのです。
夏のアスファルトはほとんど凶器


温度は足元よりも頭部のほうが感じやすいので、人間にはそれほど暑く感じなくても、頭が地表に近いわんちゃんは猛烈な暑さを感じているのです。
人間にとっても夏の日中35℃を超えるような日に、アスファルトの照り返しのきつい道路を歩くのはしんどいものですが、それがワンちゃんの立場になると、気温は50℃以上で65℃の地面上を歩くことになってしまうのです。
もちろんこんな環境にいて無事に済むはずありません。低温やけどを引き起こす温度は43℃以上と言われておりますので、真夏のアスファルト上で散歩すればわんちゃんが肉球をやけどする可能性が高まりますし、暑さで熱中症になるリスクもグッと高くなります。
熱中症は最悪死亡リスクがありますし、やけどをした場合もすぐに水や保冷剤で応急処置をする必要があります。どちらの場合も応急処置をした後は、動物病院に連れて行って処置してもらうと良いでしょう。
夏は散歩にいかないのも選択

散歩に行くなら夜間か早朝
夏の昼間に散歩に行くのは、水場や日光のあたらない涼しい森林の中などは例外ですが、基本的にお勧めできません。
散歩に出る時間帯としては気温の下がる夜間か早朝の二択となります。ただ夜間も日が落ちたからと言って安心できません。気温は下がっても地面はまだ熱いまま、ということがあるからです。
1日の気温が一番下がるのは大抵早朝ですので、散歩時間としては日の出前後が最も適していると言えます。可能であるならば遅くとも朝の7:00ごろまでに散歩を終わらせてしまうのが理想的でしょう。
猛暑でしかも熱帯夜が続くような時期は、朝になっても暑くてとても散歩どころでは無いことも珍しくありません。そんな時は散歩を休むのも良い選択です。散歩は朝晩2度が理想と言いますが、それも状況によりけりの話しで拘る必要はありません。
わんちゃんの目線に立つと、住宅や商店の空調の室外機から放出される排熱も、ちょうど顔の高さに来るのでバカになりません。
散歩道の風通しが悪いと、こうした排熱が地表付近にたまっていて、わんちゃんの歩く場所の温度が想像以上に高くなっていることもあります。
できれば散歩コースは、熱のたまりやすい住宅街や商店街は避けて、なるべくひらけた風通しの良い場所にある道を選びたいところです。
でも自宅の場所の関係で、そのような散歩コースを選べない方も多いと思います。
そんな場合はわんちゃんにとってコンディションの悪い道を歩かずに済むように、最初から散歩に適したコンクリートに覆われていない公園や、川沿いの散歩道などに車などで移動してしまうことをおすすめします。
やけど予防に犬用シューズや靴下を利用するのも一つのアイデアですね。
5秒ルールを適用する
アスファルトの道路が昼間に蓄えた熱はなかなか抜けませんが、地面が土や芝生などアスファルトやコンクリートで覆われていないなら、温度は日中でもそれほど上がりません。そして夜になると外気温とほぼ変わらなくなります。
夜間散歩する場合でも、必ず地面を直接触って温度を確認しましょう。地面を5秒間触ってみて熱いようでしたら、アスファルト上を歩くのまだ早いということですので、その場合散歩は控えた方がいいでしょう。
「#わんタッチ」概要
docdogが推進する「#わんタッチ」とは、夏のお散歩前に、飼い主が手の甲(手のひらより温度を感じやすい)で地面を5秒間タッチして、地表面の熱さを確認するアクションです。手の甲が熱いと感じたら、その時間帯の散歩を控えることで、夏の散歩時の犬の肉球火傷を未然に防ぐことができます。docdogの独自調査によると、
夏の地表面温度は約65℃(※1)まで上昇するため、犬が散歩中に肉球火傷を負ってしまう恐れがあります。docdogでは、犬の身体を守り、肉球の火傷を少しでも減らすべく、手の甲を地面に5秒間当てることで地表面温度を確認する「#わんタッチ」を、夏のお散歩前の“新習慣”として全国の飼い主に向けて発信していきます。
※1:2017年7月、docdogによる独自調査(東京都港区での計測)引用:PRTIMES
知っておくと便利な暑さ対策

わんちゃんはその身体の構造上、暑さが苦手です。人間には体中にある汗腺も、足の裏側(肉球)や耳の内側の下部などごく一部を除いて、ありません。発汗によって体内の熱を放出する事がほとんど出来ないのです。
さらに自前の毛皮に覆われていることも、体内の熱の排出を妨げます。それはちょうど、皆さんが夏に毛皮のコートを着ているのを想像してみると、解りやすいかもしれません。
暑さに弱い犬種には注意
寒い地域出身のわんちゃんは、暑さに弱いので特に注意が必要です。
シベリアンハスキー
チャウチャウなど
鼻が短いわんちゃんは呼吸がしずらくて、熱をうまく排出できないことがあるようです。
フレンチブルドッグ
ボストンテリア
ボクサーなど
パンティングで危険を知る
健康なわんちゃんの呼吸回数は、1分間に15~30回程度と非常にゆっくりなのですが、運動したり、遊んで興奮したり、心理的ストレスを感じたときなどに、大きく口を開いて舌を出し、早い呼吸でハアハアしていることがあります。
この呼吸はパンティングと言って、呼吸回数は1分間に200~400回にも達します。そしてこれはわんちゃんが暑さを感じたときにも見られます。
パンティングには体温調節の意味もあって、舌を出して早い呼吸をするのは唾液の蒸発を促すためであり、この時の気化熱により体内の熱を放出しているのです。ですからパンティング中は通常より多くの水分を消費するので、十分な水分を補給を心がける必要があります。
汗腺がほとんどないわんちゃんにとって、パンティングは自分で出来る唯一の体温調節方法と言っていいのですが、これにも限界があって周囲の気温が高すぎるとあまり機能しなくなります。
個体差はありますが、わんちゃんの多くは気温が30℃以上になると、暑さによるパンティングを始めるようです。ですから30℃は散歩を取りやめるかどうかの一つの目安となります。
ちなみに暑い時期や、運動直後でもないのにパンティングしていたら、それは他の病気の可能性も考えられますので、注意して上げてください。
熱中症を起こしたら?
自宅に帰って来て休んでいるのに、いつまでもパンティングが治まらないなら、それは熱中症の初期症状かもしれません。熱中症は重篤化すると死亡リスクが高くなるので、早い段階で飼い主が応急処置する必要があります。
熱中症が疑われるときは、一刻も早く体を冷やすことが重要です。体内の血管が集中する場所を冷やすことで、わんちゃんの体温を効率よく下げることができます。冷やすには保冷剤を利用するといいでしょう。
首すじ(首の前側)
わきの下
後ろ脚の付け根
これらに加えて、全身を水で濡れたタオルで覆って扇風機で送風して冷やすのも有効です。保冷剤を使う場合は、直接つけず必ずタオルや布で包んでからご利用ください。
応急処置をしてわんちゃんの体を冷やしたら、その状態をなるべくたもったまま、一刻も早く動物病院に移送して処置してもらいましょう。もし下痢、嘔吐、震えはなどがあるならそれは重篤化のサインでとても危険な状態です。
暑さ対策の便利グッズ
夏の散歩は出かける時間帯にかかわらず、熱中症のリスクが付きまといます。予防のためにも、水分補給はもちろんのこと十分な装備を心掛けたいものです。ここでは暑さ対策に使える便利な道具をご紹介します。
・放熱ウェア
散歩中のわんちゃんの胴体を冷やすための、水に濡らして使うタイプの機能性冷却ウェアです。周囲の温度が高すぎるとあまり効果がなくなる、という話も聞きますが胴体の広い範囲を冷やせるので一度試してみてはどうでしょうか。
・ネッククーラー
血管が集中する首周りからわんちゃんを効率的に冷やします。着るタイプの放熱グッズを嫌がるわんちゃんにも良いかもしれません。使い方は4,5分間水で濡らすだけで後は、首の前側にあてて装着させるだけでとても簡単なうえ、意外と長持ちするのでおすすめです。
・犬用アイスクリーム
散歩から帰ってきたら、わんちゃんにアイスクリームはいかがでしょう。夏に外出すれば体温も上がってしまいます。そんな時は熱中症予防に食べ物で体内から熱を下げるのも有効です。




まとめ
今回は夏の犬の散歩の注意点についてご紹介しました。
- 猛暑が続くときは無理に散歩に出かける必要はない
- 夏の地表付近は温度50℃、アスファルトは65℃の場合もあるので熱中症とやけどに注意
- 日中は環境が厳しすぎるので、散歩するなら朝晩どちらかがベスト
- わんちゃんが暑がっているかどうかは、呼吸からも判断できる
- 熱中症予防に体温を下げる便利なグッズを利用しよう
気温40度で災害レベルの猛暑と言っているのに、夏のアスファルトの温度が65℃超える、というのには非常に驚きました。変な比較ですが牛乳を低温殺菌するときが大体65℃ですから、やはりとんでもない温度ですよね。
周囲の温度というのは主に自分の頭の位置で感じてしまうので、人間目線だと地面の温度にあまり注意を向けませんが、わんちゃんの立場に立ってみればこれは大変なことです。外の温度が50℃以上あるとき出かけようなんて普通は考えませんからね。
夏はわんちゃんにとって、とりわけ過酷な季節ですから散歩も含め無理しないよう心掛けてください。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。