目がかゆい、目が赤い。花粉やアレルギーでご自身が目のトラブルに悩まされている飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
人間も辛い目のトラブル。「そういえばうちの犬の目は大丈夫なのかな?」そんなふうに思いませんか? 実は犬の目のトラブルは珍しくないんです。点眼だけで治るものから、手術が必要なもの、最悪の場合は失明してしまうものまで、その症状は様々です。
でも大丈夫! 症状がわかっていれば早く異常に気付けるはずです。早く対処してあげることで、治療も短くできますし、最悪の事態も避けることができます。
では、どんな異常があるのか早速見ていきましょう。
一目瞭然! 目のまわりが赤いとき
目の周りが赤い場合はパッと見てわかりやすいので、比較的気づきやすいと思います。疑われる病気はこちらです。
結膜炎
結膜炎になると痛みやかゆみで目が気になり、こすることで目の周りが赤く腫れることがあります。原因は外傷や細菌があります。
- 点眼や軟膏
目の腫れを惹かせるために点眼や軟膏で治療します。自己判断で水で洗うことは避けてください。
- エリザベスカラー
目をこすると治療が長引くのでエリザベスカラーを使用することもあります。
眼瞼内反症・外反症
眼瞼内反症とはまぶたが内側に入り込んでしまうことで、外反症は外側にめくれてしまうことです。内反症は上まぶたに、外反症は下まぶたに起こりやすいです。まぶたや角膜に刺激があるため、角膜炎、結膜炎になることもあります。
- まつげの抜毛
まぶたの形状の変形が軽度の場合は、角膜に触れているまつげを抜き、点眼治療を行います。
- まぶたの矯正
症状がひどい場合は、外科手術でまぶたの矯正が必要になります。
眼瞼炎(がんけんえん)
眼瞼とはまぶたのことです。眼瞼炎は上下のまぶたの周辺に炎症がおこります。原因は外傷、逆さまつげ、細菌や真菌など様々です。他の病気から目をこすり、眼瞼炎を併発することもあります。
- 基礎疾患の治療
眼瞼炎が他の病気によって引き起こされている場合は、そちらの治療を優先します。例えば、感染症から引き起こされているのなら抗菌薬の投与や点眼が必要です。
- エリザベスカラー
外傷性の場合、傷を触ってしまうと治りにくくなるため、エリザベスカラーで保護することが必要になります。しかし、原因が他にあるのであれば症状を長引かせてしまうため、見極めが必要です。
麦粒腫(ものもらい)
マイボーム腺とはまつげの生え際にある皮脂腺のことです。麦粒腫はマイボーム腺が目詰まりして炎症を起こします。飼い主さんの中にもかかったことがある人がいるのではないのでしょうか? 目の違和感と痛みを伴います。原因は細菌感染です。
- 抗生物質の使用
細菌感染のため、抗生物質を使用して治します。点眼、軟膏、飲み薬があります。
- エリザベスカラー
違和感から顔を床に擦り付けるなどで角膜を傷つけてしまうと大変です。その防止のために、治癒するまではエリザベスカラーが役立ちます。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)
霰粒腫はマイボーム腺が詰まり、分泌されるはずの油分が固まってしまった状態です。麦粒腫よりも痛みは弱く、時間が経過してから気づくことが多いです。繰り返してしまうことが多いので注意が必要です。
- 固まった分泌物の除去
固まった部分を小さく切開して内容物を押し出し、取り除きます。
- 抗生物質や消炎剤の使用
周りに炎症がある場合は抗生物質や消炎剤などの目薬や飲み薬を使用します。
目を触っちゃだめ! 早く治す必須アイテム
目の病気になってしまったら、こすらない、触らないのが回復への近道! でも、飼い主さんの思いとは裏腹に、痛みや違和感から目を触ってしまうものです。
そんなときはエリザベスカラーの出番です。犬の首元に装着し、目元に手が届かないようにします。普段と違うことにストレスを感じ、嫌がってしまうこともあります。愛犬のそんな姿を見てしまうとつい外してあげたくなってしまいますよね。
でも、ここはぐっと我慢。エリザベスカラーは愛犬の辛い時間を少しでも短くしてあげるために必要なアイテムなのです。
とはいえ、少しでもストレスは軽減したいものです。こちらの動画を参考にして、少しずつ慣れさせてあげましょう。
ご褒美をうまく使いながら装着、移動までできれば病院での診察もへっちゃらです。
じっくり見て! 目の中が赤いとき
もう少し顔を覗き込んでみてください。目は赤くありませんか? 目の周りよりも目の中のほうが心配になってしまいますよね。詳しく見ていきましょう。
緑内障
緑内障は視神経や網膜に異常をきたし、視野狭窄が起こる病気です。遺伝的な目の構造異常から発症する場合と、眼圧が上昇する他の病気(ぶどう膜炎、水晶体脱臼、眼内潰瘍など)から発症する場合があります。主な症状に目の充血があります。
- 眼圧を下げる
眼圧を下げるための薬を点滴、点眼、注射、内服薬など様々な方法で投与します。
- 瞳孔を収縮させる
初期段階の緑内障は瞳孔を収縮させる点眼薬で進行を遅らせることも可能です。
遺伝的な目の構造異常が起こりやすい犬種は北極圏原産の品種(シベリアン・ハスキー、秋田犬、サモエドなど) や、スパニエル種、チャウ・チャウ、シャー・ペイ、トイ種などです
眼球内腫瘍
眼球の中にも腫瘍ができることがあります。眼球の色が変わったり、目から出血することもあります。他の部位への転移する可能性もありますので、早期の治療が必要になります。
- 外科手術
腫瘍を切除するために外科手術が必要になります。病状によって、眼球を温存するか摘出するかが変わってきます。かかりつけの獣医師との相談が必要です。
前房出血
前房出血とは角膜と虹彩との間にある、液体で満たされた空間(前房)への出血です。外から見ると黒目の部分に血が溜まっているように見えます。見た目は怖いのですが、前房出血自体よりも出血の起こった原因や前房出血が慢性化して緑内障に移行する方が心配です。
- 経過観察
少量の出血であれば自然に体内に吸収されるのを待ちます。
- 基礎疾患の治療
出血の原因がブドウ膜炎や網膜剥離などの場合は、そちらの治療を優先的に行うことが必要です。
目の充血やアレルギーについてはこちらをごらんください。
そんなのもあるの?! 気になる目の異常
目の周りや目の中以外でも異常が見られる場合があります。早期発見と治療で予後がずいぶん違いますので気をつけて見てあげてください。
眼球脱出
頭部の圧迫や外傷などによって、眼球が脱出してしまうことがあります。また、びっくりした時にいつもよりも目が飛び出してしまうことがあります。これは短頭種に見られます。
- 眼球の整復
軽症の場合、眼球をもとの位置に戻すことが可能です。まぶたがむくんでいる場合は切開が必要になります。脱出からの時間が短いほど治療後の回復は早まります。
短頭種とはフレンチブルドッグ、シー・ズーなど鼻の部分が短い種類のことです。
短頭種以外で眼球脱出が見られる場合は、緑内障や眼球の後ろに膿が溜まっているなどが考えられます。早めにかかりつけの獣医師に見てもらってください。
目の病気についてもっと詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。
まとめ
今回は愛犬の目が赤いときに考えられる疾患とその対処法をご紹介しました。
- 目の外が赤い場合は、結膜炎、眼瞼内反症・外反症、眼瞼炎、麦粒腫、霰粒腫が考えられる
- 目の中が赤い場合は、緑内障、眼球内腫瘍、前房出血が考えられる
- 眼球自体が脱出してしまう場合もある
どれも、早く気づいてあげられたら最悪の事態は避けられます。毎日愛犬の顔をよく観察してあげてください。また、あなたの不安は愛犬にも伝わってしまいます。もし症状を見つけた場合も慌てずに対処してあげてくださいね!