ごはんやお菓子を食べているとじぃーっと感じる愛犬の眼差し。物欲しそうに見つめられるとついお裾分けしたくなりますよね。
わんちゃんにとって人間の食べ物は興味をそそる未体験の誘惑。いつも食べているご飯とは香りや見た目も違えば、飼い主さんが美味しそうに食べていればなおさら興味津々です。
ですが、人間にとっては日常的な食べ物であっても、わんちゃんにとっては毒と同じくらい危険な食べ物があるんです。
そこで今日はわんちゃんにとって危険な食べ物とその致死量についてお話ししていきます。
有害な食べ物を食べた時の対処法とは?
今回紹介する食べ物はどれもわんちゃんに中毒症状を引き起こさせます。その対処法は共通しています。わんちゃんが危険物を口にしてしまった際、どう行動するかの参考にしてみて下さい。
- まずは動物病院へつれていく
- 家で無理な対処はしないこと(獣医師に任せるのが最善です)
- 病院で催吐処置をしてもらう
- 胃洗浄
- 場合により、点滴・ビタミン剤・強心剤・利尿剤などの投与をしてもらう
わんちゃんが危険物を食べてしまった場合、その危険物を口や胃などの体内から取り除く必要があります。
まずは早急に動物病院へ連れて行き、獣医師の判断に任せて処置をしてもらいましょう。
中毒症状でわんちゃんも苦しみ、もがいたり痙攣を起こしたりする場合があります。無理に家で対処しようとするとかえってわんちゃんにケガをさせてしまう場合もある為、注意が必要です。
飼い主さんも緊急時には気が動転してしまうこともあるかと思います。まずは冷静になり、病院に行った際に「いつ」「何を」「どのくらい」食べてしまったのかを詳しく獣医さんに伝えましょう。
食べた物のパッケージなどがある場合は、病院へ持って行き獣医さんに見せることで的確な処置を受けられます。
わんちゃんにとっては毒も同じ!危険な食べ物7選とは?
ここではわんちゃんにとって毒になり得る食べ物を7つ紹介していきます。どの食べ物も中毒症状を引き起こし、最悪の場合は死に至る危険があります。わんちゃんが口にしない様、細心の注意を払いましょう。
ネギ科の植物
- タマネギ
- 長ネギ
- 青ネギ
- ニラ
- ニンニク
- らっきょう
- わけぎ
- あさつき
タマネギなどは人間にとっては血液がサラサラになるなど積極的に摂るように奨められる食べ物ですが、わんちゃんにとっては毒となり得る食べ物の代表格です。
ネギ科の植物は動物にとって有害な食べ物であり、意外なことにわんちゃんやネコちゃんだけでなく、ハムスター、ウサギ、羊や牛も食べるのは危険と言われています。
その理由は、ネギ科の植物に含まれるアリルプロピルジスルファイドという成分が血中の赤血球を破壊してしまい、溶血性貧血という貧血状態を引き起こすからです。
赤血球は本来、血液を通して身体中に酸素を運ぶ役割をしています。その赤血球が破壊される為、酸欠に伴う症状が出てきます。
- 元気がなくなる
- 食欲不振
- 嘔吐や下痢
- 血尿(破壊された赤血球のヘモグロビンが尿から出てしまう)
- 発熱
- 酸素不足による呼吸困難
- 黄疸(眼球の白目部分が黄色くなる)
- 臓器機能の低下
食べた量にもよりますが、症状が摂取後すぐに出るわけではありません。1日から数日後に症状が出ることが多いです。
ネギ科の植物を食べた際に塩水を飲ませると良いという噂があるようですが、これは間違いです。塩中毒になる危険があるので絶対に止めましょう。
わんちゃんがタマネギなどの食材を口にしてしまうケースとして、次のようなケースが考えられます。
- 料理中にうっかり落としてしまった物をわんちゃんが食べてしまう
- ハンバーグなどタマネギなどの入った料理を食べてしまう
- ネギ科の食材を切った包丁やまな板をそのままわんちゃんの手作りご飯に使用
- コロッケや惣菜パンなど、ネギ科食材が入っていることを忘れて飼い主さんが食べている物を与えてしまう
ネギ科植物の場合、食材そのものというよりもアリルプロピルジスルファイドという成分が有害である為、エキスだけでも十分に危険です。
お味噌汁などのネギ科食材を加熱した食べ物はエキスが染み出てしまっている為、おつゆやスープなどにも注意してください。
チョコレートなどのカカオ含有製品
チョコレートって甘くて美味しいですよね。そのまま食べるのはもちろんのこと、チョコレート味のケーキやアイスも人気の高いスイーツではないでしょうか。
人間にとっては魅力的なチョコレートも、残念ながらわんちゃんにとっては有害な食べ物です。カカオに含まれるテオブロミンという成分が中毒症状を引き起こします。
この成分には「大脳興奮作用」や「呼吸興奮作用」、「心機能異常作用」があり、症状にもその特徴が現れます。
- 嘔吐や下痢
- 失禁
- 喘ぎ(呼吸異常から)
- 神経過敏
- 動悸
- 頻脈
- 興奮
- 心臓のリズム障害
- 痙攣
- 昏睡
これら症状は摂取後6時間から24時間以内に現れ、ひどい場合には死に至るケースもあります。少量摂取の場合でも、病院で検査をしてもらうと良いです。
誤解されていることもありますが危険なのはチョコレートではなく、あくまでもカカオです。ココアなどカカオ成分を含む食材であれば有害ですので注意して下さい。
- チョコ製品などを食べてしまった
- チョコパンやチョコアイスなどをうっかり与えてしまった
- ココア(飲み物やパウダーなど)を舐めてしまった
新事実!? ブドウやレーズンも危険食材
2000年に入ってからレーズンを食べたわんちゃんが腎不全を起こしたという論文が発表されたことで、ブドウやレーズンもわんちゃんには有害と言うことが分かりました。ですが、どの成分が有害かなどの詳細は未だに不確かなままです。
ブドウやレーズンを摂取したわんちゃんに見られる症状は次の物が挙げられます。
- 嘔吐や下痢
- 食欲不振
- 元気がなくなる
- 身体を丸める
- 多飲多尿
- 脱水症状
これらの症状は、摂取後数時間から72時間以内に現れます。体内から毒素を排出する役割を持つ腎臓に負荷がかかり、大きなダメージを負う可能性があります。
腎臓へのダメージがかなり大きい場合は完全に回復しないケースもあるので、細心の注意が必要です。
- フルーツとしてブドウを食べてしまう
- レーズン入り菓子パン
- ブドウやレーズン入りのドライフルーツ
- シリアル
マカデミアナッツ
基本的にナッツ類自体がわんちゃんにとっては油分が多く、消化しづらい食べ物です。その中でもマカデミアナッツの危険性は高く、マカデミアナッツ中毒が重度の場合、腎不全を引き起こす可能性があります。
まだ原因物質が分かっておらず、未知数も高いので注意する必要があります。症状としては次のようなものが挙げられます。
- 下痢や嘔吐
- 無気力
- 痙攣
- 発熱
これら症状は摂取後1時間から12時間以内に現れることが多く、症状が出るまでの時間が短いのが特徴です。
最近では健康食としてナッツを食べることが推奨されるなど、ミックスナッツなどをスーパーで良く目にする方も多いのではないでしょうか。
マカデミアナッツもその中に含まれていたりするので、良く召し上がる方はわんちゃんの届かないところで保管すると良いです。
アボカド
アボカドはわんちゃんにとって有害な食べ物として挙げられることが多いものの、食べてもなんともなかったというケースも報告があります。
アボカドに含まれるペルシンという成分がわんちゃんに中毒症状を引き起こさせるのですが、アボカドの種類によってペルシンの含有量が異なる為、ケースバイケースという結果になるようです。
ただし、日本で売られているアボカドはグアテマラ種と言いペルシンを非常に多く含む種類のようなので、舐めてしまったという場合も獣医さんに相談した方が良いです。
- 嘔吐や下痢
- 呼吸困難
- 脱水
- 痙攣
症状は摂取後12時間以内に発症し、24時間以内に治療することが推奨されています。最近ではアボカドオイルなど食材だけでなく調味料としても使われることがあるようなので、その点にも注意して下さい。
キシリトール
良くCMなどで歯を強くする成分としてキシリトールは有名ですよね。それだけではなく、人間にとっては甘味料としても利用されていることは知っていますか。
人間にとってはお砂糖の代わりもなる便利なキシリトールですが、わんちゃんに対する作用は全く違います。
わんちゃんがキシリトールを摂取すると、膵臓からインスリンが急激に放出されます。インスリンという物質は血糖値を下げる働きがある為、低血糖症を引き起こしてしまうのです。
- 嘔吐
- 脱力感
- 意識の低下
- 痙攣
- 発作
- 昏睡
これらの症状は摂取後30分から1時間で現れ、症状が進行すると2時間から72時間以内に急性肝不全を引き起こす可能性があります。
- キシリトール含有のガムを食べてしまう
- キシリトール入りの歯磨き粉を食べてしまう
- 甘味料としてのキシリトールを食べてしまう
ユリ科の植物
- ゆり
- チューリップ
- ヒヤシンス
- スズラン
- アロエ
ユリ科の植物は動物にとって毒性の高い植物です。植物そのものだけでなく、花粉やエキスも十分に危険であり、少量でも症状が出ます。
- 嘔吐や下痢
- 食欲不振
- 痙攣
- 吐血
- 胃腸炎
- 多臓器障害
- 呼吸不全
- 尿細管壊死
- 腎不全
ユリ科の植物に関しては、これまでに紹介してきた物の中でもとりわけ毒性が強いのが特徴です。
部屋にユリ科の植物を置かないことは言うまでもなく、散歩中にも気をつけた方が良いです。
- 部屋にユリ科植物が飾ってあり食べてしまった、または花粉が付いてしまった
- 部屋に飾って合ったユリ科植物の花瓶の水がこぼれ、それを舐めた
- 散歩コースにユリ科植物が植えてあり、それを食べてしまった
⚠危険な食べ物の致死量は?
1つ前の項目ではわんちゃんにとって危険な食べ物を7つ紹介しました。ここではその7つの食べ物をどのくらい食べると死に至る危険があるかを紹介します。
また食べ物だけではなく睡眠薬に関しても話していきますので、愛犬に睡眠薬を飲ませている飼い主さんもご参考下さい。
ネギ科植物の致死量
個体差はあれど、体重1kgに対して約15~20g以上が致死量です。タマネギ1個を食べても平気だったケースもあれば、一切れでも中毒になったケースがあります。
柴犬や秋田犬などはネギ科植物に弱く中毒になりやすい犬種なので、特に気をつけて下さい。
カカオ製品の致死量
体重1kgに対してテオブロミン50~100mg前後で中毒になると言われています。市販の板チョコは大体60gほどで、板チョコの2/3枚分くらいがテオブロミン100mgに相当する計算です。
ただし、ここで注意点があります。最近はカカオ含有量85%などを売りにした高カカオチョコをスーパーなどで見たことはありませんか。
カカオの含有量が高くなれば、その分だけテオブロミンの含有量も多くなります。そうなると板チョコ1/3枚でも危険な可能性が出てきます。
そこでチョコレートの種類ごとのテオブロミン量を下に示しておきます。高カカオチョコがお好きな方はご参考下さい。
チョコレートの種類 |
テオブロミン量(板チョコ1枚当たり) |
ホワイトチョコレート |
気にする必要のない量 |
ミルクチョコレート |
150~180mg |
ビターチョコレート |
450~600mg |
ブラックチョコレート |
1000~1200mg |
ブドウ・レーズンの致死量
体重1kgに対して10~30g以上が危険量とされています。ただし食べ物紹介の項目でも説明した通り、ブドウやレーズンのどの成分が有害であるかなど、未知の部分が多いです。
上記の数値はあくまでも参考として、食べさせないことがベストだと言えます。
マカデミアナッツの致死量
体重1kgに対して2.2g以上が致死量と考えられます。ただし、マカデミアナッツも中毒症状を引き起こす原因物質が明らかでない食べ物の1つです。
体重に関係なく3粒でも危険な状態に至ったという症例もあり、注意が必要です。ナッツ類は全般的に消化不良を起こす可能性がある食べ物なので、わんちゃんが誤って口にしないよう、保管方法に注意することをオススメします。
アボカドの致死量
アボカドは品種によって、わんちゃんにとって有害な成分であるペルシンの含有量が異なります。そのため、明確な目安はありません。食べないに越したことはないので、わんちゃんが口にしないように注意して下さい。
キシリトールの致死量
体重1kgに対して1.6g以上が致死量目安です。キシリトールガム1粒に含まれるキシリトールの量はおよそ1.3gほどなのでご参考下さい。
キシリトールの場合はわんちゃんが低血糖症になることが問題なのですが、ご飯などを与えた後などは低血糖になりにくく、条件により致死量が異なるという報告もあります。
ユリ科植物の致死量
とにかくユリ科植物はわんちゃんにとって毒と同じです。葉っぱ1~2枚程度でも最悪の場合は死に至ることもあります。
わんちゃんが過ごす生活環境からユリ科植物を遠ざけることで危険を回避することが出来ます。気分転換に散歩コースを変えようかとご検討の方は、まずは公園などにユリ科植物がないかなどを事前にチェックしてみるのも良いです。
睡眠薬の致死量は?
睡眠薬については危険な食べ物の項目では触れていませんが、人間と同様、過剰摂取は死に至る危険性があります。ここでは睡眠薬の取り扱いに関して少しお話します。
わんちゃんも高齢になると認知症になることがあり、夜泣きという行動に現れる場合があります。遠吠えするように朝まで鳴き続けることもあり、飼い主さんにとっても辛く、近所からクレームがきてしまうこともあります。
獣医さんから認知症が認められると、必要に応じて睡眠導入剤などを処方される場合があります。睡眠薬が処方される場合、獣医さんから必ず使用方法に関して説明があるので、その説明に応じて愛犬へ睡眠薬を与えて下さい。
裏を返せば、獣医さんからの指示以上に睡眠薬を与えた場合が致死量と考えても良いです。処方される薬の種類や成分によって致死量は異なります。
まとめ
こうして色々と見てみると、タマネギにアボカド、ナッツに高カカオチョコなど、最近の健康食ブームでよく目にする食材が沢山出てきたと思いませんでしたか。
もしかするとわんちゃんにとっての危険な食べ物が、最近よく買っている食べ物ということも少なくないかも知れません。もう一度おさらいしてみましょう。
- わんちゃんにとって危険な食べ物を食べてしまった場合はすぐに病院へ!
- 危険な食材を7つ紹介しました。誤ってわんちゃんが口にしてしまった時は、「何を」「いつ」「どのくらい」摂取したかを冷静に把握しましょう。
- 致死量はあくまでも目安でしかありません。即座の対応が明暗を分けます。また睡眠薬などわんちゃんに与えるお薬は獣医さんの指導の下、用法用量を守って使用しましょう。
わんちゃんとの幸せな毎日の為に、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後までお付き合い下さりありがとうございます。